2013 Fiscal Year Annual Research Report
メタゲノミクスを用いた菌類エンドファイトの多様性解析
Project/Area Number |
23770083
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大園 享司 京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (90335307)
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Keywords | エンドファイト / メタゲノミクス / 多様性 / 林冠生物学 / 次世代シーケンサー / 熱帯林 / 菌類 |
Research Abstract |
菌類は地球上に150万種いると推定される多様な生物群だが、微小で形態的特徴に乏しいため、その多様性研究は立ち遅れている。特に、植物の生葉の組織内に無病徴で感染しているエンドファイト(内生菌)は、熱帯降雨林において「超多様」である可能性が示唆されているが、分離培養やクローン解析といった従来の方法では、網羅的な解析が困難であり、その実態については不明であった。本研究では、近年発達の著しい次世代シーケンサーを用いて、低地熱帯林の樹高40~60メートルの林冠部に位置する樹木生葉を材料としたメタゲノミクスを行い、エンドファイトの多様性を網羅的に解析した。 マレーシアおよびオーストラリアの低地熱帯林において、合計4樹種の生葉を、林冠クレーンにより採取した。生葉組織からDNAを抽出・精製し、菌類特異的なプライマーを用いてrRNA遺伝子ITS領域の塩基配列をPCRにより増幅し、ロシュ454 Titaniumを用いてパイロシーケンシングした。比較のため、本邦南西諸島の亜熱帯林で採取した2樹種の生葉についても同様の解析を行った。低クオリティの配列やキメラ配列などを除去したあとの95278配列について、相同性閾値97%でクラスタリングを行い操作的分類群(OTU)に区分するとともに、データベースに照合することで分類群を検討した。 その結果、エンドファイトとして合計224 OTUが得られた。サンプルあたり約3000リードの解析で、推定OTU数の75~98%が得られた。データベースとの照合により、全OTUの87%が子嚢菌類に分類された。種まで同定できたOTUは全体の8%に過ぎず、未知種や未登録種が数多く含まれる可能性が示された。地域間、樹種間、およびサンプル間でOTU組成の類似度が低かったことから、解析サンプル数を増やせば、さらに多数の菌類OTUが得られる可能性が示唆された。
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