2012 Fiscal Year Research-status Report
北太平洋産クサウオ科魚類の系統地理学~爆発的種分化の要因と種多様性の解明
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23770085
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
甲斐 嘉晃 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教 (30379036)
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Keywords | 多様性 / 種分化 / 系統地理 / 分類 |
Research Abstract |
本研究では,遺伝的情報を用いて(1)系統地理学的視点から北太平洋のクサウオ科魚類の地理的分化とその歴史を明らかにし,爆発的種分化の要因を推定すること,(2)分類学的な整理を行い,その多様性を正確に把握すること,を目的としている.平成24年度には,(1)オホーツク海・日本海・太平洋に広く分布するスイショウウオ属のアバチャンに関する系統地理学的研究,(2)サケビクニン種群に関する分類学的検討,(3)浅海性クサウオ科魚類の予備的な系統地理学的研究を行った. (1):スイショウウオ属のアバチャンについては,昨年度までに引き続きオホーツク海,日本海,太平洋域から広くサンプルを収集し,ミトコンドリアDNAの分析に加えて,新たに核ゲノムの分析を併用して系統地理学的研究を行った.この結果,形態的特徴とミトコンドリアDNA,核ゲノムの分析結果に一部不一致が見られ,アバチャンは海域ごとに分化しているものの,海域間で低頻度の移動や交雑の可能性が考えられ,当初考えていたよりもかなり複雑な進化パターンを持っていることが示唆されている.(2):サケビクニン種群に関しては,これまでに海域間の遺伝的・形態的分化が確認されていたが,分類学的な検討は十分ではなかった.今年度は北太平洋を網羅する標本とタイプ標本の関係について整理し,概ね学名の決定を行った.(3):浅海性クサウオ科魚類の系統地理学的研究をミトコンドリアDNAを用いて行った.深海性クサウオ科魚類では海域ごとに分化していることが多かったが,浅海性クサウオ科魚類では今回調べた3種では遺伝的集団構造は確認できず,海域間での分散・移動がかなり高頻度で起こっている可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
標本採集,遺伝的分析,形態的分析は概ね順調である.当初予定していたアラスカビクニンの標本採集が十分ではなかったが,24年度末から25年度初旬にかけて,調査航海への参加が決まり,これに関してもすぐに解消される見通しが付いている.
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Strategy for Future Research Activity |
分析対象となる標本の採集は25年度の初旬までで全て完了できる見通しがたっている.今後は必要に応じて各博物館などに保管されている標本の調査,さらに分類学的研究に必要なタイプ標本の観察も行う.遺伝的分析においては,浅海性クサウオ科魚類のデータを増やし,深海性クサウオ科魚類と異なり,なぜ遺伝的集団構造がないのかについて考察する.また,北太平洋に広く分布する深海性クサウオ科魚類,アラスカビクニンも予備的解析は進めており,今後標本が揃い次第,本格的な研究を進める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度は,浅海性クサウオ科魚類の遺伝的分析,およびアラスカビクニンに関する遺伝的分析に関わる物品費,また,これまでの成果について学会発表,論文公表するための旅費や論文印刷費が主な使用目的となる.遺伝的分析については,これまでのノウハウが既に蓄積されており,これまでの年度よりも少ない額でも成果を十分に挙げられると考えている.
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Research Products
(3 results)