2011 Fiscal Year Research-status Report
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23770087
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高橋 一男 岡山大学, 異分野融合先端研究コア, 助教 (10450199)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 発生過程安定性 / 量的遺伝学 / 形態測定学 / 進化可能性 |
Research Abstract |
進化的キャパシターとは、発生過程を安定化することで、環境、遺伝変異を緩衝し、表現型の多型を隠すことで、遺伝変異の集団中への蓄積を促進する機構を指したものである。本研究では、キイロショウジョウバエを研究材料として、進化的キャパシターの候補となる遺伝子、ゲノム領域の探索を目的として研究を行った。DrosDelプロジェクトにより作成されたゲノム欠失系統を用いて、キイロショウジョウバエゲノムの約65%をカバーするゲノムワイドスクリーニングを行った結果、複数のゲノム領域に、発生過程の安定化効果が見られ、進化的キャパシターの候補となりうる可能性が示唆された。また、進化的キャパシターの候補となる可能性があることが示唆されている、熱ショックタンパク質遺伝子の1つであるHsp70に関しても、その発生過程安定化効果を検討したところ、一部の形態形質において、有意な効果を示した。この他に、キイロショウジョウバエの野生集団において、発生過程安定性制御に関与する自然遺伝分散の有無を調べたところ、野生系統間で、発生過程安定化能に有意な分化が見られた。現在、これらの系統に対して発生過程安定性を増加させる方向と、低下させる方向に人為選抜実験を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
欠失スクリーニングとRNAiを用いた解析により、発生過程の安定性に影響するゲノム領域、遺伝子の候補が特定された。現在は、これらの候補遺伝子、候補ゲノム領域に対して、進化的キャパシターとしての機能を持ちうるかどうかを検討中である。これらは、予定していた計画の半分程度の進度に当たるため概ね順調に研究が進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
進化的キャパシターの有力な候補と考えられたHsp遺伝子について、RNAi法による発現の抑制が形態形質の遺伝分散に与える影響を検証することで、遺伝変異緩衝機能の有無を調べる。また、進化的キャパシターの候補となり得るゲノム領域が特定されているため、遺伝的背景が同一な欠失系統コレクション(DrosDel系統)を用いて、それらが形態形質の遺伝分散に与える影響を検証する。これとは別のアプローチで進化的キャパシターの候補を得るため、申請者が現在樹立中の、翅形態への環境変異緩衝機能を上昇させた系統と、低下させた系統について、発現レベルの異なる遺伝子をマイクロアレイ法等により特定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に請求する研究費は、消耗品費として、RNAi実験のために、遺伝子組み換えショウジョウバエ系統の購入、遺伝子発現定量の為のプラスチック用品、試薬代、ショウジョウバエ飼育用の餌代等として使用する。また、ショウジョウバエの形態測定の補助に謝金代を使用する。加えて日本進化学会や、日本生態学会において、研究成果発表を行うための旅費としても使用する予定である。
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Research Products
(5 results)