2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23770087
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高橋 一男 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (10450199)
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Keywords | 遺伝変異緩衝機構 / 環境変異環境機構 / ゆらぎ非対称性 / 形態測定学 |
Research Abstract |
先行研究では、進化的キャパシターの候補とされているHsp90であるが、従来の研究では,その機能喪失が致死性を招いてしまい,解析が困難であった。本研究では、GAL4-UAS-RNAiシステムを用いて,翅原基特異的なHsp90のノックダウンを行うことで、致死性を回避し,特定の組織の形態形成の安定性の解析を行った。その結果、Hsp90は、量的形質については進化的キャパシターとしては機能しない可能性が示唆された。これに加えて、Hsp90と類似の機能を持つことが期待される、分子シャペロン遺伝子の環境変異緩衝効果を調べるために、分子シャペロン遺伝子にRNAi法を網羅的に適用した。その結果、4つのsmall Hsp遺伝子が、進化的キャパシターの候補となる機能を持つことが示された。 上記の候補遺伝子アプローチによる研究の他に、更なる候補遺伝子の探索を目的として、遺伝的背景の同一な、ゲノム全体に渡る欠失系統コレクションを用いてゲノムワイドスクリーニングを行った。その結果、剛毛、翅形態、発育期間など、様々な形態、生活史形質において、進化的キャパシターとして機能する可能性のあるゲノム領域が特定された。今後、今回特定されたゲノム領域に対して、より高解像度の欠失スクリーニングと個別の遺伝子に対するRNAi法を組み合わせることで、これらの遺伝子の中から、進化的キャパシター候補遺伝子の特定を目指して研究を行う予定である。進化的キャパシターは、生物の不連続的な進化を主張する、断続平衡説のメカニズムの一つとなりうるもので、その解明は生物の進化のより深い理解につながる可能性がある。また、遺伝変異緩衝機構が解明されれば、育種における人為選抜の効率を大幅に改善することが可能となり、重要な応用的な意義を持つと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
欠失スクリーニングとRNAiを用いた解析により、発生過程の安定性に影響するゲノム領域、遺伝子の候補が特定され、進化的キャパシターの候補ゲノム領域の特定までが終了した。当初の予想よりも多いゲノム領域が候補となる可能性があることが分かったため、遺伝学的スクリーンニングや、個別のゲノム領域の効果の評価に予定よりも長い時間が必要となったが、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
予定していた遺伝学的スクリーニングを行った結果、研究計画時の予想よりも多いゲノム領域が候補となる可能性があることが分かった。そのため、遺伝学的スクリーンニングや、個別のゲノム領域の効果の評価に予定よりも長い時間が必要となり、実験の予定がずれたため、未使用額が発生した。次年度には、引き続き形態計測実験を行う必要があるため、1.ショウジョウバエ飼育用の飼料、2.ショウジョウバエ飼育用容器、3.必要な分子実験用試薬類、4.形態測定実験補助者への謝金等に未使用額を使用する予定である。これらに加えて、実験のスピードアップに必要と判断すれば、実体顕微鏡やインキュベーターといった備品の購入の可能性もある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ショウジョウバエ飼育用の飼料:約5万円 実験試薬:5万円 プラスチック用品:約10万円 実験補助者への謝金:15万円
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