2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23770087
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高橋 一男 岡山大学, その他の研究科, 准教授 (10450199)
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Keywords | 遺伝変異緩衝機構 / 形態測定学 |
Research Abstract |
前年度までの研究により、多数のゲノム領域で環境変異緩衝効果が検出されたため、遺伝変異緩衝機能を持つゲノム領域も、同様に複数存在する可能性が示唆された。キイロショウジョウバエのゲノム上に、進化的キャパシターとしての機能を持ちうるゲノム領域が複数存在するかどうかを検証するため、上記と同様のゲノム欠失系統61系統を用いて、遺伝変異緩衝効果を評価した。本年度の研究では、翅形態に明確な遺伝的分化が観察されている、野生系統10系統の間に存在する、翅形態の自然遺伝分散を増大させるような効果を持つゲノム領域を探索した。ゲノム欠失処理における遺伝変異顕在化効果は、まず広義の遺伝率を推定する事で行った。その結果、対照処理においては、翅形態の遺伝率は0.354であったのに対して、欠失処理においては、それを0.8付近まで上昇させるものが見つかり、8つのゲノム欠失で有意な効果が検出された。これら有意な効果の見られたゲノム欠失処理が、翅上のどの部分の自然遺伝変異に影響したのかを可視化した結果、対照処理では翅全体に一様に分布していた自然遺伝分散が、欠失処理では特定の部位に局在していたことが分かった。翅の前方部に特に大きな自然遺伝分散の局在が見られる場合や、翅の内部もしくは後方部に自然遺伝分散の局在が見られる場合があり、ゲノム欠失によって、顕在化する自然遺伝分散の種類が異なる事が示唆された。この結果は、該当するゲノム領域に、翅形態の遺伝変異を緩衝し、表現型分散を小さく抑える効果があることを意味しており、かつ、翅の部位特異的に遺伝変異緩衝機構が異なることを示唆している。これらのゲノム領域には、Hsp遺伝子などの既知の候補遺伝子は含まれなかったため、新規の進化的キャパシターが見つかる可能性が高いと考えられた。
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