2012 Fiscal Year Research-status Report
分子マーカーを用いた日本列島のコケ植物の遺伝構造と空中のリソースに関する研究
Project/Area Number |
23770089
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
坪田 博美 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10332800)
|
Keywords | コケ植物 / 葉緑体 / ハプロタイプ / 散布 / 蘚類 / 日本列島 |
Research Abstract |
平成24年度は,材料の採集およびマーカーとなるプライマーの設計,空中からの散布体の回収・培養,DNAバーコーディングによる同定,葉緑体ゲノムの一部の決定を行った.材料の蘚類アカイチイゴケPseudotaxiphyllum pohliaecarpumおよびその近縁種であるP. densumとP. maebaraeを中国・四国地方を中心に中部以西の地域で採集し,実験に用いた.これまで近縁種で変異が認められていた葉緑体rbcLおよびrps4については,種間では両者に,種内ではrps4について変異が確認された.また,核ITSおよび18S rDNAについては,前者について種間で変異が確認された.また,葉緑体ゲノムの全体の増幅を行うべくLong PCR用のプライマーを追加設計し,増幅を行った.増幅できた断片についてシークエンスを行ったところ,一部の断片で目的領域ではない部分が増幅していたため,現在再設計を行っている.空中からの散布体については,17株が新たに得られ,そのうち16株でシークエンスが成功した.得られた配列をもとにDNAバーコーディングを行ったところ,これまで確認されていなかった複数の種の配列が確認できた.一部のプライマーについては別の材料を対象とした研究に応用できた.また,野外調査の際に新産種および分類学的再検討が必要となる種が確認された.これらの成果について学会および論文で発表を行った.予算については,プライマーなどの消耗品を対象に物品費に多くを充て,他の品目については別予算を充てて対応した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
材料の採集および空中からの散布体の回収・培養およびDNAバーコーディングについては,ほぼ予定通り研究を進めることができた.一方,マーカー開発に関連して次世代シーケンサによる緑体ゲノムのドラフト配列決定については,一部の断片で目的領域ではない配列が増幅されていたことから遅れている.平成23年度に行われた大学間協定を活用した東南アジアでの予備的調査については,マレーシアの半島部において順調に行うことができた.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,平成24年度で計画よりも遅れている葉緑体ゲノム増幅用のプライマーセットの設計を早急に行い,葉緑体ゲノムのシークエンスを行う.80%程度の領域についてはすでに増幅が確認されているプライマーを用いて,シークエンスのための実験を進めているため,それを継続して行う.また,残りの領域については,新たにプライマーを設計することで実験を進める.野外での試料採集については,平成24年度中に過去の調査や標本からアカイチイゴケの分布の概略を明らかにすることができたため,調査およびサンプリングを継続する.平成25年度は,平成23・24年度で調査できなかった地域についてサンプリングを行い,ハプロタイプの決定を継続して行う.分子マーカーによる集団レベルの解析を行うため,各場所で複数個体を採集し,乾燥または凍結保存した材料を実験に用いる.各地でのサンプリングと並行して,空中に浮遊する散布体についても引き続き細く・培養し,研究に用いる.得られたサンプルについてハプロタイプを決定し,比較する.これらの実験は平成23年度にコケ植物用に設計したプライマーのうち,多型が認められた領域を用いて実験を進める.平成25年度以降も基本的に交付申請書に従って研究をすすめる.また,集団遺伝学的な解析も進める.最終年度の平成26年度には,平成23-25年度で得られた結果をもとに,野外および空中から得られたサンプルについて分子系統地理学的解析を行う.また,これまでの結果に基づいて地理的構造の解析を行う.葉緑体DNAハプロタイプ間の系統関係を明らかにするとともに,地域集団の関係や多様性を明らかにする.最終的に初年度以降に得られたデータをまとめて,日本列島における蘚苔類フロラの成立過程に関する総括を行うとともに,得られた結果をとりまとめ成果発表を行う.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現在の予定では,平成25年度以降の研究費の使用の費目別内訳に大きな変更は予定していない.現在,消耗品を中心とした物品費と野外調査のための旅費,実験補助のための人件費・謝金,計算サーバ等の利用のためのその他の費目としている.実験の進展に従って,必要に応じて調査旅費および実験補助のための人件費・謝金を増額する可能性がある.
|
-
[Journal Article] Geographical origin of Leucobryum boninense Sull. & Lesq. (Leucobryaceae, Musci) endemic to the Bonin Islands, Japan2013
Author(s)
Oguri, E., Yamaguchi, T., Tsubota, H., Deguchi, H. & Murakami, N.
-
Journal Title
Ecol. Evol.
Volume: 3
Pages: 753-762
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-