2011 Fiscal Year Research-status Report
比較分子系統地理学によるカブトガニと共生ウズムシの共進化および集団史の解明
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23770090
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
西田 伸 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 学術研究員 (40423561)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | カブトガニ / カブトガニウズムシ / 共進化 / 分子系統地理 / インドネシア / フィリピン / 台湾 / 東アジア |
Research Abstract |
本研究は、アジア地域に生息する3種のカブトガニ(カブトガニ、ミナミカブトガニおよびマルオカブトガニ)とその寄生性プラナリア(カブトガニウズムシ類)におけるそれぞれの系統地理を明らかとし、宿主と寄生者の共進化の有無とその進化史の解明を目的としている。本年度は、東南アジア地域におけるカブトガニ類の分布状況とウズムシの有無について調査し、これら試料の採集に努めた。これまでに本地域におけるカブトガニ類については、大まかな分布情報のみしか得られいなかったため、本調査においてそれらの再確認と近隣他地域における分布を確認した。結果、インドネシアのスラバヤ、東カリマンタンには3種がほぼ同所的に生息することを再確認し、いずれの地域においてもミナミとマルオが優占しており、カブトガニは個体数が少ないことが示唆された。また同じくカブトガニの生息するとされる西部スマトラ・パダンでは、本種の生息を示す証拠は得られたが、その数は非常に少ないことを示した。スマトラ・ジャンビにはマルオのみが、西ジャワ・セラン、北スマトラ・メダンにはミナミおよびマルオの生息が再確認された。またフィリピン・パラワンではカブトガニのみが分布し、個体数も比較的豊富であった。寄生性カブトガニウズムシはそのほとんどの調査地の個体から発見され、これらほぼ全てが本種群の初記録である。共同研究者による試料提供も含めて、宿主・寄生者ともに日本、台湾、マレーシア、フィリピンそしてインドネシアの各地より計400を超える試料を収集できた。現在、カブトガニウズムシ類のミトコンドリアDNA・COI領域の解析を進めている。ウズムシ類で利用されている複数のプライマー対を試験し、クローニングを経て日本、台湾、マレーシアの個体から候補配列を得ることができた。これらは種間差および地域差を示しており、本種の系統地理的解析に有効なマーカであることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本科研費予算および別予算による海外調査により、インドネシア5地域(西部スマトラ・パダン、中央スマトラ・ジャンビ、東カリマンタン・バリッパパン、西ジャワ・セラン、東ジャワ・スラバヤ)、マレーシア1地域(マレー半島南西部・ジョホール)およびフィリピン・パラワン島より、カブトガニ類およびその寄生カブトガニウズムシの試料を得ることが出来ている。さらに台湾の共同研究者より台湾海峡の試料、そして自身による国内調査により日本各地の生息地における試料も得ており、本年度だけで合わせて400を超える試料を収集できた。DNA解析については、カブトガニ類についてはこれまでにマーカーを確立しており、解析への準備は整っている。なおインドネシア産試料については全てDNAは抽出済みである。カブトガニウズムシについては、今回目的としているミトコンドリアDNA・COI領域の配列は知られていなかったが、既存の複数のプライマーセットを試行し、クローニングにより増幅産物を分別したところ、日本、台湾、マレーシアの個体から候補配列を得ることができた。これらは種間差および地域差を示しており、本種の系統地理的解析に有効なマーカであることが示唆された。以上のように、おおむね当初の目標通りに試料の収集およびDNA解析を進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、海外からの試料の収集に努める。特にインドネシアの東カリマンタン地域およびスラバヤ地域では3種のカブトガニ類がほぼ同所的に生息しているが、カブトガニ(Tachypleus tridentatus)の試料がほとんど収集できていない。そのため本年度もこれら地域の再調査を中心に新たな地域(タイや可能性があればベトナム)も含めて試料の収集を行う予定である。DNA解析については、カブトガニ類はほとんどルーチン作業が可能であるため、採取された試料の解析を速やかに進める。カブトガニウズムシ類については、これまでにクローニングによりミトコンドリアDNA・COI領域の候補配列が得られているが、全ての個体についてクローニングを行うことは不可能であるため、本種群・本目的配列を増幅する特異的プライマー対の開発を行いたい。得られた結果について、特にカブトガニウズムシ類の種間の遺伝的差異については、本年度中の学会発表および論文発表を考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続きインドネシアおよびフィリピンを中心とした東南アジア諸国における現地調査/再調査・試料採取を行うべく、採取用備品、旅費および現地協力者への謝金の支出を予定している。また得られた試料のDNA解析(DNA抽出、PCRによる増幅、クローニングおよびシーケンス)における研究試薬の購入を予定している。
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Research Products
(2 results)