2013 Fiscal Year Research-status Report
特異な性の維持機構とその進化-全く新しい性表現を持つ植物からのアプローチ
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23770100
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
布施 静香 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30344386)
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Keywords | 進化 / 雄性両性異株 / 性表現 / カラスザンショウ / イヌザンショウ |
Research Abstract |
多くの植物は,単一個体に雌雄を備えた「雌雄同株」あるいはどちらか一方の性しかない「雌雄異株」から集団が構成されており,雌株と両性株から集団が構成される「雌性両性異株」も珍しくない。一方,雄株と両性株から集団が構成される「雄性両性異株」は,わずかな種からしか報告されていない非常に稀な性型である。現在までの調査により,ミカン科のカラスザンショウとその近縁種であるイヌザンショウは,雄性両性異株性を示すことが2つの集団で明らかになった。しかも,カラスザンショウ・イヌザンショウともに両性株の個体は雄花と雌花が同時につくのではなく,雄花が散った後に雌花が咲くといった性の時間的変化を示す事が明らかになった。 今年度は、昨年度に引き続きオス個体と両性個体の繁殖成功度の比較に関する調査を行った。また、カラスザンショウの雄性両性異株性の安定性評価のため、性比の地理的変異を調査した。繁殖成功度の比較については、父系解析用の種子サンプルを得るための人工授粉の手法の不備を改善し、解析用種子サンプルの確保を行った。また、昆虫の専門家と協力して訪花昆虫の特定を行った。性比の地理的変異については全6集団で調査を実施し、オス個体:両性個体の比率は1:1.3~2.9程度であるという結果を得た。いずれの集団においても雌個体は存在しなかった。これにより、カラスザンショウの雄性両性異株性は種の特徴として安定しており、地域によって性比が異なることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の実験の結果、課題として挙げられた人工授粉の手法を改善し、解析用種子サンプルの追加取得を行った。また、計画どおり複数集団を対象に性比調査を行い、この性型は種としての特徴であることが明らかになった。また、性比には集団間で変異があることも明らかになった。一方で、今年度は申請者が産後休暇と育児休暇を取得したため、分子遺伝学的実験を行うことができなかった。 当初の予定では今年度が最終年度であるが、産後休暇と育児休暇の取得による研究の遅れはやむを得ないと考え、評価区分は上記とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度実施できなかった分子遺伝学的実験を実施し、雄株と両性株の繁殖成功度の比較を行う。そして、本研究課題の総括を行い、雄性両性異株性の進化や維持機構の解明に取り組む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請者が産後休暇と育児休暇を取得した事から、当初予定していた研究のうち分子遺伝学的実験を十分に実施することができなかった。そのため、今年度予定していた分子遺伝学的実験を次年度(最終年度)に実施することとした。 今年度予定していた分子遺伝学的実験を次年度に実施して解析を行う。未使用額はその経費に充て、本課題研究を推進する。
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