2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23770101
|
Research Institution | (財)高知県牧野記念財団 |
Principal Investigator |
田中 伸幸 (財)高知県牧野記念財団, その他部局等, 研究員 (40393433)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | ショウガ科 / 種多様性 / 形態 / 系統 |
Research Abstract |
単子葉植物のショウガ科(Zingiberaceae)は,ショウガ目に属する大型多年生草本類で、有用植物を多く含有するが、その一方で属の系統関係は明らかとされているものの各属内の種の多様性の解明は極めて不十分である。本研究では、大陸アジアでの未研究地域で種の多様性を明らかとすることでショウガ科全体の種多様性の解明に貢献することを目的として、本研究を推進した。 平成23年度は本研究の基盤を確立するため、これまでの先行研究でミャンマー、タイなどで採集したショウガ科126標本および個体などについて、圃場でのコレクションを全て整理し、開花を促進する状態に整え、サンプルの整理を行った。研究補助アルバイトを雇用して126全個体に識別番号をつけ、採集地情報をデータベース化し、定期的に開花調査を行った。開花した53個体について、腊葉標本、液浸標本を採集し、各分類形質となる形態写真の撮影を行った。現時点で栽培区画を設定して属ごとに配置し、それもデータ化を行った。 その後、開花調査、形態、染色体など生態学的、形態学的、細胞遺伝学的研究を行い、ショウガ属、Hedychium属について検討した。ミャンマー中部に隔離的に分布する固有と思われるショウガ属の新種を見いだし、発表した。一方、ミャンマー西部から採集された種が、タイ西部固有種とされていたZingiber ideaであることが判明し、本種の分布の中心はむしろミャンマーであることを明らかとし、染色体数の報告も初めて行った。これらの成果は、本研究の一連の成果を発表する学術論文2報として発表した。また、記載した分類群などの属内系統関係や既知分類群との系統関係を検討するため、DNA解析用のサンプルの採取を行い、120個体についてDNAの採取を行った。次年度に系統関係の検討を行う定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、本研究の基盤作りとして研究材料のデータベース化を行い、順調に形態や細胞遺伝学的研究を推進することができた。そのデータを基盤として120標本や個体情報の管理を行うと共に、研究圃場に栽培して開花の状況を把握し、開花個体の形態や生態を観察すると共に遺伝子情報の解析のためのDNAサンプルの採取、およびDNA抽出を進めることができた。その結果として、ミャンマー産のショウガ属新分類群の記載発表、新分布情報などを得ることができた。また、分子系統解析用のDNA採取実験もほとんどの個体で終了した。ここまでは、計画通りかそれ以上に進展したが、予定していたタイでの標本調査が、バンコクの洪水で初年度にできず、次年度に変更した。海外での標本調査についてのみ当初の計画からは少し遅れているが、概ね順調と判断される。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の核心部分における研究の基盤を確立できたと共に、ショウガ属では、すでにある一定の成果を得ている。今後は、今年度に採取したDNAサンプルについて、葉緑体DNAのtrnL intron および trnL-F spacer領域のシークエンスを行い、未記載種と既知種との系統関係の推定や種レベルでの多様性の解明を形態学的、生態学的、細胞遺伝学的、分子生物学的手法を用いて多面的に解析する。特に、新知見が得られているショウガ属に加えて、当初の研究計画の通り、東南アジア大陸部(熱帯モンスーンアジア)のZingiber属、Hedychium属、Boesenbergia属について文献調査を行う共に分類学的研究を行う。開花が難しい個体に関しての検討は課題であるが、栽培条件を変更するなど、次年度中になるべく多くの個体で開花調査が可能なように方策を立てた上で研究を遂行したい。種レベルの分類学的研究のため、熱帯モンスーンアジアの同科タイプ標本を多く収蔵するタイの林業省標本館(BKF)やカルカッタ標本館(CAL)での標本調査研究を平行して実施する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用計画では、まず人件費・謝金は、前年度の採取、抽出したDNAサンプルのPCR実験で特定領域の遺伝子を増幅させ、シークエンシングによって配列を比較する系統解析実験の実験補助アルバイトを継続して雇用することに使用する。 旅費については、国内の文献調査のための旅費とともに前年度に実行ができなかったタイ林業省標本館(BKF)での標本資料調査のためにも使用する。タイでの標本調査は6月下旬から7月上旬に予定している。 物品費は、ほぼ細胞遺伝学的研究(染色体の観察など)および分子系統解析実験に使用する実験試薬およびガラス器具など実験関連消耗品に使用するほか、肥料や栽培用具など研究材料の栽培管理に関する消耗品が必要になった場合は、それらにも使用する予定である。 そのほかの経費については、論文投稿にかかる費用(カラー図版代金や投稿料など)に支出予定である。
|
Research Products
(2 results)