2012 Fiscal Year Annual Research Report
核磁気共鳴法による巨大蛋白質の立体構造の新規解析法の開発
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23770111
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮ノ入 洋平 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任助教 (80547521)
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Keywords | 核磁気共鳴法 / 高分子量蛋白質 / SAIL |
Research Abstract |
当該年度において、MSG蛋白質のフェニルアラニン(Phe)およびトリプトファン(Trp)残基の芳香環CHシグナルとイソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)およびバリン(Val)残基のメチルシグナルとの分子間NOEの解析を行った。3次元 13C NOESYの解析により、X線結晶構造より期待される分子間NOEシグナルを高感度に観測することに成功した。このことにより、巨大蛋白質の精密立体構造の決定に向けた距離情報の抽出が可能であることが見出された。 より多くの距離情報の抽出を目指し、チロシン(Tyr)およびヒスチジン(His)残基の芳香環CHシグナルおよびメチオニン(Met)残基のメチルシグナルの観測も行った。さらにこれら芳香環CHシグナルとメチルシグナルとの間のNOE解析も進めた。しかし、MSG中のこれら残基のメチルシグナルの数が多く、NOEシグナルの帰属に困難が生じた。この問題を回避するため、SAIL技術を駆使して、LeuおよびVal残基のアミノ酸特異的かつメチル基の立体配座特異的な標識法を開発した。本標識法の開発は、実施計画には挙げられていなかったが、巨大蛋白質の構造解析に必要不可欠な技術として、開発を進めた。これにより、従来のアミノ酸前駆体を利用したメチル基の標識法で問題となるシグナルの縮重やシグナル感度低下の問題を解決し、巨大蛋白質においても、簡便かつ正確にNOEシグナルの帰属を行うことが可能となった。 これまで、分子量82kDaのMSGを利用して、立体構造解析法の確立を進め、その礎を築いてきた。当該年度では、本手法の有用性を明らかにするため、分子量約1MDaのGroEL-ES蛋白質にも適用した。その結果、GroEL-ESにおいてもPheおよびTyr残基の芳香環CHシグナルを高感度に観測することに成功し、本手法が様々な巨大蛋白質の構造解析に利用できることを見出した。
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