2013 Fiscal Year Annual Research Report
難関試料に立ち向かう生体系固体核磁気共鳴法ー光を使った高感度化
Project/Area Number |
23770114
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松木 陽 大阪大学, たんぱく質研究所, 助教 (70551498)
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Keywords | 固体核磁気共鳴法 / 感度向上 / 光励起核偏極 |
Research Abstract |
昨年度から引き続き、電子受容-供与体の共有結合化合物の合成を試みたが、複数の副産物からの単離に苦しんだ。そこで開発のスループットを向上する目的で、分子の自己集合能(ミセル化)を利用する新手法を考案した。透明度の高いミセル試料の調整法を確立、核分極の正味の増加(~20%)を観測できた。光の強度やマトリクスを吟味して分極の増強率はもっと向上できるだろう。これに加えて光励起常磁性種による緩和促進効果を高速信号積算と組み合わせ、信号雑音比を更に最大2.5倍向上できることを見つけた。また信号取り込み中は光照射しないことで、スペクトル分解能は全く損なわない事も実証した。キシリトールマトリクス中では有機物質の13C縦緩和時間が従来のマトリクスに比べ顕著に増大している事を見出し、分子運動が効果的に抑制されていると示した。この様な「硬いマトリクス」はマイクロ波を用いる動的核分極法などにも有用で、広い応用が期待できる。 全体として本研究では光を使った固体NMRの高感度化に向けた準備と基礎データ集めを行い、装置やアイデアの基礎を作った。具体的には光照射するためNMRプローブの改造や、試料管インサートの開発から始め、460nm低出力レーザー(0.1W)で励起できる色素分子の探索を行い、フラビンの誘導体が有望だと見いだした。更に、光照射で比較的長寿命の励起常磁性種が発生すること、これにより巨視的磁化の縦緩和を大きく増進できることも見出し、高速の信号積算で時間感度を向上できることも示した。同時に、光を使った偏極法では高感度と同時に高分解能が実現できることも実証した。なにより、光合成タンパク質の活性中心のような手の混んだ系ではなく、ありふれた小分子だけの系で、(現段階ではごく小さいものの)正味の核分極増強を光照射で得られる事を初めて示した点は、今後の発展に寄与する画期的な一歩と言える。
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Research Products
(2 results)