2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23770116
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
新間 秀一 大阪大学, 産学連携本部, 特任助教 (30515896)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | イメージングマス / タンデム質量分析 / 複合脂質 / 高エネルギー衝突誘起解離 |
Research Abstract |
本年度は,主に組織表面上における直接質量分析を用いた脂質構造解析について詳細に検討を行った.本研究で研究代表者が用いた装置は日本電子社製JMS-S3000である.本装置はマトリックス支援レーザー脱離イオン源を搭載し,質量分離部である飛行時間型(TOF)質量分析計に17mの飛行距離を持つSpiralTOFと呼ばれる装置を搭載している.この17mの飛行距離により,非常に高い質量分解能を得られる装置である.この高い質量分解能は生体組織の直接質量分析において,非常に複雑なイオンピークパターンを示すスペクトルから,高精度に1つのピークを分離し構造解析のためのタンデム質量分析を行うことが可能となる.また,もう一つの特徴としては,本装置では高エネルギー衝突誘起解離(HE-CID)が可能となる.HE-CIDにより得られる分子の構造情報は非常に特徴的であり,特に複合脂質においては,その脂肪酸の構造までも詳細に検証することが可能である.本年度は,この装置を用いてワイルドタイプマウス脳組織表面において複合脂質の構造解析を行った.複合脂質のHE-CIDによる構造解析はこれまでに報告が無く,研究代表者はこの成果についてPLoS Oneで報告を行った.現在,論文は受理され公開準備中である.本論文において,マウス脳切片上で直接スルファチドの構造解析を行ったところ,通常のスルファチドではd18:1スフィンゴシンにC24:1のネルボン酸が結合していることが知られているが,その構造では説明できない脂肪酸構造の存在を示唆したデータが得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
装置性能評価のためにマウス脳切片を直接質量分析し,また直接得られたイオンの高エネルギーCIDスペクトルを得て分析を行ったところ,これまで報告されている構造とは異なる脂肪酸を有する複合脂質を見いだし,それが論文として受理されたことは1年目としては順調であると考えている.今後,この手法を疾患組織に適用することで,どのような脂質がどこにどれだけあるのかを示すことが出来ると期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
23年度の研究の過程で,現在用いている分析装置の使用法を工夫することで,異なる脂肪酸構造を持つ脂質の分布を可視化することが可能となることを見いだした.この方法を用いることにより,スペクトルデータのみで議論するだけではなく,実際にイメージングも行うことが出来ることは今年度の研究にとって非常に大きな意味を持つ.このようなデータは,現在研究代表者が用いている装置でなければ得ることはできず,これは日本オリジナルの装置を用いて日本オリジナルのデータで研究を進めていきたいと考えている研究代表者にとって追い風となる.今後は,動物の疾患モデルについてこの手法を用いて解析を行っていきたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者は24年度より,大阪大学から国立がん研究センターに異動した.これは,代表者が常日頃から医療現場で本当に意味のある研究を行いたいと考えていたからである.今回,国立がん研究センター研究所多層オミックスバイオインフォーマティクス分野で,ラボを新しく立ち上げるところから取り組んでいるため,本年度の研究費しよう計画としては主に物品費としてガラス器具,プラスチックディスポーザル製品並びにピペット類について支出しようと考えている.また,海外での発表も現在のところ2件計画しており,積極的に情報発信を行っていきたいと考えている.場合によってはプレゼンテーションのために携帯型端末の購入も計画している.
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