2012 Fiscal Year Research-status Report
超高分解能X線および中性子線結晶構造を基盤とした銅含有アミン酸化酵素の反応解析
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23770127
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
村川 武志 大阪医科大学, 医学部, 助教 (90445990)
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Keywords | TPQ / アミン酸化酵素 / 高分解能 |
Research Abstract |
銅含有アミン酸化酵素は,生物界に広く分布し種々の生理活性アミン類の酸化的脱アミノ反応を触媒する.本研究は土壌細菌Arthrobacter globiformis由来の銅含有アミン酸化酵素(AGAO)について,超高分解能X線結晶構造解析,および中性子線結晶構造解析を中心とした解析により,タンパク質のダイナミクスによる酵素触媒反応の進行の詳細を明らかにすることを目的にする.本年度はX線結晶構造解析での分解能の上昇を試みた. AGAOの発現,精製,結晶化条件はこれまでと変えず,抗凍結剤を以前使用していたグリセロールからPEG200に変えることによって,これまでの分解能(1.8オングストローム)を大幅に超える分解能1.08 オングストロームの高分解構造を決定することに成功した.タンパク質分子周辺には多数の低分子量PEG分子が存在し,入り込んだPEG分子によりタンパク質分子の揺らぎが抑えられたことが分解能の向上に寄与したと考えられる.また,全体の約4割の水素原子の電子密度を検出し,多くのアミノ酸残基がdouble conformerをもつことを明らかにした.さらに異方性温度因子の解析により,活性中心残基の協奏的な揺らぎを見出したほか,活性中心付近において,基質である酸素分子と考えられる電子密度を観測した.以上,得られた精密な立体構造情報に基づき,AGAOの構造変化や揺らぎを伴う反応機構,特に基質酸素分子の活性中心への進入機構について新たな知見を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
X線結晶構造解析については超高分解能データをとるための条件がほぼ確立し,一昨年度,基質アナログを用いた反応中間体アナログ構造のデータをとることに成功した.中性子線構造解析については東日本大震災の影響により研究用原子炉が停止しているため回折測定ができない状況であるが,測定用の大型結晶の作成に成功しており原子炉再起動後にはすぐに測定可能である.また,原子炉再起動が難しいようであればJ-PARCでの中性子線回折測定も検討する.
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Strategy for Future Research Activity |
X線結晶構造解析については実際の基質を用いた反応中間体構造の決定を試みる.中性子線構造解析についてはより大型で高品質の結晶を得ることを試みる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の未使用額を含め,結晶調製用の試薬および測定施設(SPring-8, 日本原子力研究開発機構)までの旅費に使用する.
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Research Products
(3 results)