2011 Fiscal Year Research-status Report
構造安定化と抗体との複合体化によるロイコトリエンB4受容体の結晶化
Project/Area Number |
23770133
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
堀 哲哉 独立行政法人理化学研究所, 宮野構造生物物理研究室, 専任研究員 (20344054)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | GPCR / 結晶化 / 熱安定化 / 大量調製 |
Research Abstract |
メタノール資化酵母を使用して、ロイコトリエンB4受容体(BLT1)の大量発現を実現した。合理的設計に基づいた変異体設計計画により2残基変異を導入し、熱安定性が5℃向上した。その結果、1Lの酵母培養から1mg以上の精製受容体を調製することができた。 構造既知のGタンパク質共役型受容体は、T4リゾチーム(T4L)とのキメラとして発現・結晶化させている。BLT1もその方法に従って、上記熱安定化変異体のN末または膜貫通ヘリックス5-6間のループ領域にT4Lを挿入した変異体を構築した。BLT1とT4Lの連結部位には、GlyとSerからなるリンカー領域を挟んだ。N末T4L融合体は、Gly, Gly-Ser, Gly-Ser-Glyの3種類のリンカー配列を挿入した変異体を構築した。5-6ループ間にはGly-Serリンカーを挿入したが、BLT1への挿入箇所をヘリックス5,6でそれぞれ3カ所設定し、それらを組み合わせて合計9種の変異体を構築した。いずれの変異体もリガンド結合親和性は野生型BLT1と同じであること、T4Lを挿入しても熱安定性が大きく低下しないことを確認した。 既にBLT1に対するモノクローナル抗体を作製済みである。Fab化に、熱安定化BLT1変異体またはT4L融合BLT1と反応させた。複合体はゲルろ過精製操作によって解離しないことを確認した。ただし、5-6ループ間にT4Lを挿入するとFabとの複合体は形成しなかった。 熱安定化BLT1単独、T4L融合BLT1単独、BLT1-Fab複合体、N末T4L融合BLT1-Fab複合体の結晶化を蒸気拡散法とキュービックフェーズ法にて行った。得られた結晶をSPring-8のにて回折実験を行った。現在までにBLT1を含んだ結晶は得られていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2012年4月から結晶化を開始した。酵膜画分可溶化から結晶化まで2日で完了する結晶化調製方法を確立したので、週に2回独立した結晶化実験を行えるようになった。そのため、通常の結晶化方法である蒸気拡散法での結晶化と、膜中での結晶化方法であるキュービックフェーズ法での結晶化について、熱安定化BLT1単独、T4L融合BLT1単独、BLT1-Fab複合体、N末T4L融合BLT1-Fab複合体の結晶化の初期スクリーンから条件最適化、回折実験による結晶評価まで行うことができた。 キュービックフェーズに再構成することにより、BLT1とFabが解離してしまうこと、アルコールを含む結晶化条件ではBLT1のアンタゴニストが結晶化してしまうことなど、ネガティブデータであるが今後の結晶化実験の方向性を決定できる結果が得られたことは、BLT1の結晶化実現に向けて必要な結果であったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も、熱安定化BLT1単独、T4L融合BLT1単独、BLT1-Fab複合体、N末T4L融合BLT1-Fab複合体について、結晶化実験を繰り返す。前年度に、ネガティブな結果が得られた方法については、その方法は本年度は行わない。結晶化を実現させるための具体的な方策を以下のとおりである。 (i)リンカーの長さをさらに長くする。(ii)BLT1のN末と膜貫通ヘリックス5-6間のループ領域の双方ににT4Lを挿入したキメラ体を構築する。(iii)立体構造が不安定であると予想されるC末領域をプロテアーゼ処理することにより除去して結晶化を行う。 さらに、析出した結晶がBLT1の結晶であることを確証するために、結晶が得られた条件で蛍光ラベル化したBLT1の結晶化も行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本申請研究で申請した研究費は、結晶化サンプル調製と結晶化に使用する消耗品と共同研究先での実験をするための旅費のみである。次年時使用額の\27,290も含め、引き続き24年度に結晶化のための消耗品の購入と、RI実験を東京大学で行うための旅費の支出に当てる。
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