2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23770134
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
伊藤 浩美 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (00450669)
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Keywords | 糖鎖 / 糖ペプチド / 構造解析 / 質量分析 |
Research Abstract |
翻訳後修飾の一つである糖鎖付加したタンパク質が、生体内で様々な機能等を担っていることは知られている。その構造情報(糖鎖構造とその付加位置ならびにタンパク質同定)を知る手段として質量分析計が広く利用されている。非修飾(水酸基が遊離)の標準糖鎖による断片化(正イオンモードでのMADLIイオン化低エネルギー衝突誘起解離(CID))情報は、質量が同じ「異性体」を識別するためのルール抽出に有用であった。最近では構造情報を得る断片化手法も様々だが、高エネルギー衝突誘起解離(HCD)や電子移動解離(ETD)で得られる糖鎖断片情報はまだまだ乏しい。このような新たな断片化情報は、今後、簡便な糖鎖構造解析を達成するための極めて重要な情報となる。24年度は、主として負イオンモードでのMALDIならびにESIイオン化によるCID糖鎖断片化情報、ESIイオン化によるHCD糖鎖断片化情報の蓄積ならびに拡充をすべく、基本となる比較的小さな位置異性体糖鎖(非修飾体・メチル化体)を用いて各断片化について条件の最適化を行ったのち、1)フコシル化糖鎖:位置(α1-3とα1-4)および構造(H抗原とルイス抗原)異性体に関する情報、2)シアリル化糖鎖:位置異性体(α2-3とα2-6)に関する情報、3)硫酸化糖鎖:付加位置に関する情報を収集した。これまで、種々の「同一糖鎖試料(特に異性体)」の断片化情報について、異なるイオン化手法(MALDIとESIイオン化)での相関、種々の断片化(CID、HCD、ETD)による違いを検討されたことはないので、こうした標準糖鎖から得られる断片化情報は貴重なデータとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、質量分析計を用いた新たな糖鎖構造解析手法を確立するため、テンプレートとなる断片化構造情報について、3種類の断片化(低エネルギー衝突誘起解離(CID) 断片化、高エネルギー衝突誘起解離(HCD)、電子移動解離(ETD)断片化)を用いてできるだけ収集する必要がある。特に糖鎖構造解析するうえで困難とされる質量が同じ「異性体(位置異性・立体異性など)」を識別するために、これらの構造に起因した断片化情報を重点的に収集することが必要である。そこで最初の2ヵ年(23、24年度)で、異性体構造識別に有用と考えられる基本的な構造(フコシル化、シアリル化、硫酸化、分岐構造)の断片情報収集を目指し、①非修飾糖鎖のHCDおよびETDそれぞれの断片パターンの蓄積・データ比較ならびにルールの抽出・データの拡充、②メチル化糖鎖のCID、 HCDおよび ETDによるそれぞれの断片パターン情報の蓄積・データ比較ならびにルールの抽出・データの拡充を進めている。24年度は、23年度に達成できなかったフコシル化、シアリル化、硫酸化、分岐構造をもつ基本的な構造について、MALDIならびにESIイオン化による負イオンモードでのCIDおよびHCD断片化情報についても拡充・不足データの収集をさらに行った。
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Strategy for Future Research Activity |
23、24年度で収集し拡充して得られた、基本的な種々の異性体糖鎖(非修飾ならびにメチル化したフコシル化、シアリル化、硫酸化、分岐構造糖鎖)の断片化(CID、HCD、ETD)情報について、 1)特に識別困難な異性体を識別するのに有用となる断片化パターン・ルールなどの抽出を試みる。 2)1)で得られた基本糖鎖構造(比較的小さい基本糖鎖)情報を実試料サンプル中の糖鎖構造解析に応用する。 3)さらに、1)で抽出したルール・断片化の組み合わせを糖ペプチド(N-結合型およびO-結合型糖ペプチドの標準品を使用)の解析(糖鎖の付加位置と結合している糖鎖構造解析)に応用する。 4)最終的には、糖タンパク質からプロテアーゼ消化して得られる糖ペプチドについて、1)、2)、3)の知見をもとにオンラインLC-ESI-MSnによる高スループットな構造解析を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度に計上した国内外旅費ならびにその他の項目の経費の支出が無かったことで次年度以降に使用予定の研究費が生じた。 25年度は、質量分析データ取得等に必要な各物品費の使用として以下のもの使用ならびに経費を計画している。データ取得に使用する測定試料の調製にかかる試薬・溶媒・器具類として50万円、精製のためのカラム・固相抽出ディバイス(順相、逆相、カーボン担体など)として30万円、質量分析計関連の試薬・溶媒・消耗品・器具類として30万円、共通消耗品類であるチップ・チューブ類として30万円の使用を予定している。 また、学会などの研究成果発表および情報収集を行うために必要な経費として国内・外国旅費、学会参加費(国内および外国)、その他の項目として学術論文誌への研究成果発表のための費用(英文校正及び投稿料)50万円の使用を予定している。
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