2011 Fiscal Year Research-status Report
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23770135
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小原 圭介 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (30419858)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 脂質 / Rim / 非対称 |
Research Abstract |
平成23年度は、脂質非対称の乱れを感知すると考えられるRim21, Dfg16, Rim9の膜貫通タンパク質の解析を通して、Rim21が実際にコアセンサーとして働き、Dfg16とRim9が補助的に働く事を明らかにした。また、そのセンサーモチーフとして酸性残基のクラスターを絞り込んだ。また、細胞内層に存在し、負電荷を持つ脂質であるホスファチジルセリンが、脂質非対称の感知に抑制的に働く可能性を示した。この結果は、酸性残基クラスターとホスファチジルセリンの負電荷の反発が、脂質非対称感知を通常は抑制している可能性を示しており、興味深い結果である。また、そのセンサーモチーフを含む領域を蛍光タンパク質GFPに融合し、細胞内で発現させ、局在変化を追跡する系を確立した。一方、脂質非対称が乱れた際に発現が誘導される遺伝子群をマイクロアレー解析で探索し、その中から脂質非対称の乱れの修繕に寄与する可能性がある遺伝子群を選抜した。実際には、機能未知の膜貫通タンパク質を1つ、および転写因子を1つ選抜した。特に膜貫通タンパク質に注目し、解析を続けた。脂質非対称が乱れた株で、この遺伝子を欠損させると、生育が顕著に悪化した事から、この遺伝子が脂質非対称の乱れに対する細胞応答で非常に重要な機能を担っている事が分かった。この遺伝子がコードするタンパク質の局在をGFPを用いて調べたところ、主にゴルジ体と思われる細胞内膜系に局在している事が分かった。また、脂質非対称が乱れた株で、さらにこの遺伝子を欠損させると液胞の極度の断片化が引き起こされた。この事から、このタンパク質は、脂質非対称が乱れた状態で液胞の形態の維持に働く事が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度には、脂質非対称のセンサータンパク質およびセンサーモチーフを同定する予定であった。結果として、Rim21がまさにコアセンサーとして機能し、Dfg16とRim9が補助的な因子として働く事を明らかにする事が出来た。またその事により、Rim21により特化した解析が可能となり、Rim21のC末端にある酸性残基のクラスターに注目し、このクラスターが脂質非対称の感知において重要である事を示唆した。したがって、脂質非対称センサーの同定とセンサーモチーフの絞り込みについては、概ね順調に進行していると言える。また、そのセンサーモチーフの挙動を追跡するために、蛍光タンパク質GFPを融合したコンストラクトを作製し、細胞内で発現させる系を確立した。実際に顕微鏡観察を行い、DATAを取得中であり、これも当初の計画に近い形で進行してるため、概ね順調である。センサーモチーフの組換えタンパク質とリポソームを用いたin vitro実験系については、その準備段階で留まっており、当初の計画からは若干の遅れがある。一方、脂質非対称の乱れに対する細胞応答では、マイクロアレー解析で得られた結果を精査し、脂質非対称の乱れに対する細胞応答において、重要な役割を担う因子をさらに絞り込んだ。実際には、脂質非対称が乱れた株において、さらに欠損させると生育の著しい悪化を招く遺伝子を選抜した。その結果、特に著しい生育悪化をもたらす因子として、機能未知の膜貫通タンパク質と転写因子を選抜できた。さらに、その膜貫通タンパク質の解析を進め、貴重な基礎情報を得た、この点に関しては、当初の計画を上回る成果である。総合すると、概ね当初の計画通りに順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に得られた結果を受けて、引き続き「脂質非対称センシングの分子機構と細胞応答」を明らかにする。具体的には、センサーモチーフを含む領域の細胞内での挙動を、平成23年度に構築した系を用い、顕微鏡下で追跡し、脂質非対称の状態とセンサーモチーフの挙動との関係を明らかにする。また、大腸菌を用いてセンサーモチーフの組換えタンパク質を作製し、様々な脂質組成のリポソームとの相互作用を解析する。相互作用の検出には、pull-down法やFRET法を用いる予定である。脂質非対称の乱れに対する細胞応答については、平成23年度に絞り込んだ遺伝子をさらに深く解析する。特に、脂質非対称の乱れに対する細胞応答において、重要な役割を担う事が判明した、機能未知の膜貫通タンパク質については、その機能解明を目指す。実際には、脂質非対称の乱れを直接修繕する機能を有するか、すなわち脂質の内外層間移動(フリップ・フロップ)を担う新規のタンパク質であるかどうかも検討していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度と同様に、物品費、旅費、その他の経費に使用する予定である。また、英文での論文発表を予定しており、英文校閲費として、人件費・謝金を使用する予定である。特に物品費は、多額の消耗品が必要になる事から、平成23年度同様に比率が多くなる予定である。旅費は、学会発表のための費用として使用する予定である。収支状況報告書の次年度使用額については、平成23年度に実施した物品費の支払に使用する。
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Research Products
(4 results)