2011 Fiscal Year Research-status Report
JNKとp38キナーセ活性の可視化と操作によるストレス応答の特異性決定機構の研究
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23770141
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
冨田 太一郎 東京大学, 医科学研究所, 助教 (70396886)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ストレス応答シグナル / イメージング |
Research Abstract |
本年度は、細胞内のJNKおよびp38MAPK活性化の動態を先鋭的な可視化手法で解明し、さらにMAPK活性を任意に制御することで、ストレス依存的な細胞応答の特異性決定に「MAPKリン酸化シグナルを生じる場所やタイミング」という時空間的な情報がどのような役割を担うかを解明する目的で研究を行った。まず、p38MAPK活性可視化プローブの開発と性能評価を行った。蛍光共鳴エネルギー移動の原理に基づく新規の蛍光プローブ候補の発現用コンストラクトを複数作成し、培養細胞にこれを発現させる実験系を構築した。実際に細胞内にp38活性化を誘導する刺激を与えながら蛍光顕微鏡測定を行い、培養細胞レベルで十分にシグナルの検出感度が高いものを選別した。また、このプローブに変異を導入し、プローブの蛍光変化が細胞内のp38活性を反映することを確認した。次に、局在化配列を付けたプローブを(細胞膜、細胞質、核)細胞に発現させ、それぞれストレス刺激(高浸透圧、紫外線、サイトカイン、タンパク合成阻害剤)を行って細胞内の各場所でどのようにMAPK活性化を生じるのかを特定した。その結果、ほとんどの刺激で細胞質から強いシグナルが発生していることが明らかになった。トランスポゾン法でヒト由来培養細胞の細胞質に特異的に恒常的にこのプローブを発現する安定発現細胞株を得ることに成功したため、複数日にまたがる長時間の蛍光顕微測定をにも対応できるように、細胞を培養しながら細胞内FRETイメージングを行う自動顕微測定プログラムおよび測定装置を構築した。この実験系でストレスおよびサイトカイン刺激を行ったところ、弱い刺激ではサイトカインで生じるp38活性化は刺激後に一過的な上昇を見せた後活性が落ちてくるのに対して、多くのストレスの場合は活性が持続することが明らかになり、刺激の種類によって活性化の時間的な動態に違いがあることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本計画の中で、細胞に遺伝子発現を行う計画であったが、研究実施中にトランスポゾンを用いた新しい遺伝子組換えの技術が開発されて使用可能になったためこれを導入したところ、非常に簡便にかつ安価に細胞に遺伝子導入を行えるようになり、これまで困難であった蛍光プローブ安定発現株を得る事ができた。さらに、このプローブ安定発現株によって、予定していたよりも長時間の蛍光顕微鏡測定が可能になったために、実験装置の改善および測定用プログラムの改良にも力を入れる必要に迫られたが、その結果、一度に96サンプル程度を数日間にわたって非常にハイスループットに蛍光顕微鏡観察できる実験系を作成することができた。以上の経緯から当初の予定よりも桁違いに膨大なイメージングデータが得られる環境ができあがった。当初の計画ではここまでの規模の測定は想定していなかったものの、この新しい実験系でよりハイスループットな解析が可能になったことで、本研究の第一の目的のストレス刺激間の相違点が明確になってきたという点で、当初の計画以上の進展があったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本計画の中で、細胞に遺伝子発現を行う計画であったが、研究実施中にトランスポゾンを用いた新しい遺伝子組換えの技術が開発されて使用可能になったためこれを導入したところ、非常に効率よくかつ安価に細胞に遺伝子導入を行えるようになったため、当初よりも細胞培養や分子生物学試薬にかかる費用を大幅に抑制する事が可能になった。この遺伝子組換え法により長時間の大量データ取得が可能になったために、翌年度は想定以上に長時間蛍光顕微鏡装置を作動させたり、大量のデータ解析を行う必要が生じてきた。長時間測定データ取得のための光学消耗品の追加や大量データを扱うための費用などの経費が追加で必要になると思われた。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度経費は、プラスチック器具、分子生物学実験用試薬、細胞培養用試薬、光学機器用品として計画しているが、計画の方向性は全く変更がなく順調に実施できているので用途の変更はない。一方で、長時間のデータ取得に伴い、ランプなどの光学機器用品は当初よりも必要量がさらに増加する計画である。また、大量データを扱うためにコンピュータ機器とソフトウェアを追加で購入する必要がある。
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