2012 Fiscal Year Research-status Report
ゲノムDNAのメチル化模様継承を調節する酵素の構造生物学的分子基盤研究
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23770145
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
竹下 浩平 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (80346808)
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Keywords | メチル化模様維持 / X線結晶構造解析 |
Research Abstract |
平成23年度に維持メチル化反応の中心的存在であるマウス由来Dnmt1のX線結晶構造解析により、Dnmt1は多段階的な構造変化を伴う調節機構により維持メチル化反応を行っていることを明らかにし論文に報告した(Takeshita, K., et. al., (2011) Proc. Natl. Acad. Sci. USA)。この研究結果を基盤とし、基質であるヘミメチル化DNAを結合した状態の構造解析を行い、Dnmt1のヘミメチル化DNAの認識特異性をX線結晶構造解析により明らかにすることを本研究課題の目的とした。 平成24年度までに様々な長さのヘミメチル化合成DNAとの複合体形成に成功していたが、他の研究グループによって、Dnmt1のDNA結合部分とヘミメチル化合成DNAとの複合体結晶構造が報告された(Song, J. et al. Science, 2012) 。この報告では我々が先に結晶構造から提唱していたヘミメチル化DNAの結合に重要なアミノ酸残基が結合特異性に重要であったことも記されているが、Dnmt1の一部分とヘミメチル化DNAとの複合体であるため、多段階的な構造変化を伴う調節機構まで理解できる報告ではなかった。従って、我々は出来る限り完全長に近いDnmt1とヘミメチル化DNAとの複合体の構造決定を進めるために、前年度から行っているさらに、多段階的な構造変化を伴う調節機構により維持メチル化反応の詳細を明らかにするために、完全長のDnmt1の結晶構造解析に 取り組み、結晶化に成功し現在分解能で構造を決定することに成功しており、さらなる分解能向上を試みている。 最終的には完全長Dnmt1を用いて基質複合体の結晶構造を明らかにすることで維持メチル化反応を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Dnmt1の多段階的な構造変化を伴うメチル化模様維持反応の調節機構を明らかにするために、291-1620残基と共有結合性基質との複合体形成および結晶化スクリーニングの段階に到達し、さらに難易度の高い2種類の完全長Dnmt1(ヒト由来Dnmt1, マウス卵母細胞由来Dnmt1)の結晶化スクリーニングおよび分解能改善に着手出来ており、おおむね順調に進展できていると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究成果で得られた291-1620残基のDnmt1と共有結合性ヘミメチル化DNAの複合体の結晶化スクリーニングを続ける。さらにヒト由来の完全長Dnmt1の結晶化スクリーニングを進める。マウス卵母細胞由来Dnmt1は分解能改善を目指す。これらの結晶化スクリーニングや結晶化のために十分な結晶化試料の調製と高純度精製を行 う必要があり、結晶化スクリーニングと並行してこれらの試料調製法の最適化も進める。できるたけ早急に結晶化を成功させ、X線回折実験を行い、構造決定へと進める。これらの実験を複合的に進めることで、Dnmt1が触媒する維持メチル化反応の全貌を明らかにするよう研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。主に、消耗品としてDnmt1の大量発現系である昆虫細胞の培地や血清の購入および合成DNAのや結晶化スクリーニング試薬の購入に充てる。必要に応じてプラスチック製品(ピペットチップやバッファー容器)の購入に充てる。
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