2011 Fiscal Year Research-status Report
新規光学技術を用いた糖脂質と膜受容体の相互作用解析
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23770155
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
樺山 一哉 東海大学, 糖鎖科学研究所, 准教授 (00399974)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | スフィンゴ糖脂質 / ガングリオシド / イメージング / 蛍光顕微鏡 / 生体膜 / 脂質ラフト / マイクロドメイン / 膜受容体 |
Research Abstract |
脂質二重層は、細胞膜の基本的構成要素である。近年の研究によれば、多様な脂質分子集団は無秩序に分布しているのではなく、例えば、細胞膜表面に局在するスフィンゴ糖脂質とコレステロールとの安定した会合により、他の脂質領域とは異なったマイクロドメイン(脂質ラフト)が存在していると考えられている(脂質ラフト仮説)。本研究では脂質ラフトの組成変化が膜受容体分子の局在およびシグナリングに影響を及ぼすメカニズムに関する研究を行った。具体的には、光退色後蛍光回復法(FRAP)および共焦点顕微鏡の光電子増倍管をもちいた蛍光相関スペクトル法(point-scan FCS)やラスター画像相関スペクトル法(RICS)などにより膜脂質変化が膜受容体の動態に関与することを数値化して解析を行った。脂質ラフトの組成変化の方法としては、糖転移酵素を遺伝的に再構成した細胞を数種類用いて、上皮成長因子受容体の活性測定および糖脂質生合成阻害剤のD-PDMPを用いた検証を行った。その結果、脂質ラフトを形成していると考えられる糖脂質の組成変化は受容体の活性および膜流動性に影響することが実証できた。また、糖脂質とタンパク質の相互作用を検出する新しい手法として蛍光相互相関スペクトル法(point-scan FCCS)の初期検討を行い、市販の共焦点顕微鏡でガングリオシドGM1とその結合分子であるコレラトキシンの相互作用を検出することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において1年次に得られた成果のうち、糖転移酵素を遺伝的に再構成した細胞を数種類用いて、上皮成長因子受容体の活性測定および糖脂質生合成阻害剤のD-PDMPを用いた検証実験については、現在論文作成の準備中である。2年次は蛍光相互相関スペクトル法(point-scan FCCS)についてさらにケーススタディを増やした検討を行うことで、市販の共焦点走査型蛍光顕微鏡を用いた脂質ータンパク質相互作用の簡便な解析手法を構築していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度に使用する研究費が生じた背景として、同時期に進行中であった私学助成(戦略的研究基盤形成支援事業)の研究において使用する消耗品および実験器具等が重複したため(研究内容は異なる)、優先的に上記助成金を使用していった結果、次年度に繰り越し可能な当該研究費が発生した。そのため今後の研究推進策として、次年度以降に請求する研究費と合算して研究内容の拡充を計る。具体的には、再現検討回数を増やす。計画の効率化を図るために調整済み試薬の購入数を増やす。実験の精度向上のための機器購入に充てる等の対応を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
蛍光標識化されたタンパク質を細胞に発現させるためには遺伝子組み換え実験による発現プラスミドの構築が必要である。そのためには遺伝子解析アプリケーションが必要不可欠であるが、申請者はこれまでにフリーソフトを駆使して実験を行っていた。今後は有償の遺伝子解析アプリケーションを利用することで本研究を効率良く推進していきたい。また実験の精度向上のために再現実験を増やすため、試薬および抗体の購入金額が増加する見込みである。さらに、本研究において組換えアデノウイルスを使用しているが、ウイルスを安全かつ効率よく精製し、力価を計測していくために、高価であるが市販のキットを購入し使用したい。また、蛍光顕微鏡に使用する蛍光プローブやオルガネラの染色試薬を購入して動態解析に活用していく。これらの研究に関して、得られたデータの統計解析やデータ整理に必要であれば、新たなPCの導入も検討する。
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