2011 Fiscal Year Research-status Report
ナトリウムイオン輸送型ATP合成酵素のイオン輸送機構の解析
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23770160
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Research Institution | Ube National College of Technology |
Principal Investigator |
三留 規誉 宇部工業高等専門学校, 物質工学科, 講師 (90431981)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | ATP合成酵素 / 分子モーター / イオン輸送 / イオンポンプ / 膜タンパク質 |
Research Abstract |
平成23年度は、ナトリウムイオン輸送型ATP合成酵素のFoaのアミノ酸残基をシステイン残基に置換し、これらを化学修飾した酵素の機能解析からイオン輸送経路を調べた。「ナトリウム輸送型FoF1のFoへのCys変異導入」:Na+輸送型FoF1のイオンチャネルを形成するアミノ酸残基を調べるために、すでに構築されているP.modestum由来のNa+輸送型FoとThermophilic Bacillus PS3由来のF1から成るハイブリットFoF1の発現系を用いた。このハイブリッドFoF1のFoaサブユニットにCys残基を導入したCys 変異体を作製し、FoF1欠損株であるE.coli JM103 Δunc PST-Iに発現させた。膜調整には、冷却遠心機(現有設備)と冷却超遠心機(現有設備)を用いて、遠心分離により、調製した。SDS-PAGEおよびanti-aのウェスタンブロッティングにより、FoF1とFo-aサブユニットの発現を確認した。「システイン残基の化学修飾とその酵素の機能解析」:この変異FoF1の反転膜を用いて、Cys残基をSH基修飾試薬であるN-ethylmaleimide (NEM)で化学修飾した。anti-aのウエスタンブロッティングを行い、LAS-3000(現有設備)でFoaサブユニットのバンドを検出した。ATP合成活性を測定した結果、cytoplasm側では、G215C、K219C、I232Cの変異FoF1において約4~5割程度、periplasm側では、F288C、G229C、N230C、M231Cの変異FoF1において約3割程度のNEMによるATP合成の阻害が見られた。これよりNa+チャネルはH+チャネルと同様にaサブユニットのcytoplasm側とperiplasm側にNa+チャネルが存在することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、平成23年度はナトリウム輸送型ATP合成酵素にCys変異を導入したATP合成酵素を作製した。そして、これらのATP合成酵素の全ての発現を確認し、ATP合成活性の分析を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度以降は、FoaとFocに部位特異的変異を導入し、ATP合成酵素の回転を制御したATP合成酵素の作製と、そのイオン輸送活性の分析を行う。プロトン輸送型のATP合成酵素とナトリウムイオン輸送型ATP合成酵素でイオン輸送機構に違いが見られるか検討する。「FoaとFocのジスルフィド結合の形成による近接した残基の分析」:FoaサブユニットとFocサブユニットにそれぞれCysを導入し、ジスルフィド結合形成するATP合成酵素を作製し近接したアミノ酸を同定する。作製した変異ATP合成酵素をFoF1欠損の大腸菌JM103ΔUncに発現させる。この大量培養はシェーカーを用いて行う。回収した大腸菌を超音波破砕し、遠心分離と超遠心分離により膜画分を回収する。反転膜上のFoF1の発現はSDS-PAGEにより確認する。 反転膜を酸化剤である塩化銅で処理し、2つのCys間でジスルフィド結合を形成させる。ジスルフィド結合の形成は、anti-a、anti-cのウェスタンブロッティングにより確認し、バンドの濃さから形成効率を見積もる。ATP合成活性とATP加水分解活性を酸化状態とDTTを加えた還元状態で比較し、活性の阻害からジスルフィド結合の形成を見積もる。こうして、FoaとFocの近接した残基を同定する。「ナトリウム輸送型Foのイオン輸送と回転の関係の解析」:作製したFoaとFocのジスルフィド結合が高い効率で形成するATP合成酵素を用いてナトリウムイオン輸送と回転の関係の解析を行う。ジスルフィド結合を高効率で形成するATP合成酵素のナトリウム輸送活性を酸化状態と還元状態で分析する。酸化状態ではナトリウムイオンが輸送されず、還元状態でイオン輸送されることが予想される。同様の実験をaR226をAlaやGluに置換したものでも実験を行い、プロトン輸送型とナトリウム輸送型で違いが見られるか比較する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、ATP合成酵素のナトリウムイオン輸送活性とプロトン輸送活性の測定を行う。このために、蛍光光度計を頻繁に利用することになる。また、この研究では、蛍光光度計の測定温度を一定に保つこと、撹拌装置を備え付けること、測定中に溶液を添加するための分注用の穴が必要である。本校の現有設備の蛍光光度計は、共同備品のため、機器を加工することができない。そこで、蛍光光度計FP-8200(日本分光)(100万円)を新たに導入する。前年度の繰越金と本年度の物品費をこの機器の購入に充てる。残額は、平成24年度に必要な生化学実験用の試薬の購入に充てる。平成25年度以降の研究費の使用計画に変更はない。
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