2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23770170
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小田 賢幸 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20569090)
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Keywords | 鞭毛・繊毛 / ダイニン / 分子モーター / クライオ電子顕微鏡 / 三次元構造解析 / 微小管 |
Research Abstract |
鞭毛はその屈曲運動によって液体の流動を生み出す細胞小器官であり、哺乳類の場合、体の左右非対称性の決定、気管上皮からの異物除去、精子の運動性、脳室内の脳脊髄液流動等に必要であることが知られている。鞭毛の波打ち運動は数千個ものダイニンという分子モーターによって駆動しているが、それらの働きがどのように統率されているのかわかっていなかった。今回の研究で我々は外腕ダイニンの中間鎖(IC2)の機能的かつ構造的解析を行い、IC2が鞭毛ダイニンを中央制御装置として働いていることを発見した。 まず我々は、クライオ電子顕微鏡と化学架橋を用いて、ダイニン制御複合体(DRC)の構成タンパク質であるDRC4とIC2が外腕-内腕ダイニン連絡を形成することを明らかにした。次に、ビオチン化されたIC2を発現している緑藻クラミドモナス(ic2N変異株と呼称)を用いて外腕-内腕ダイニン連絡の機能を調べた。外腕ダイニンは通常活性が抑制されているが、外腕-内腕ダイニン間連絡が破壊されるとその制御から外れて、モーター活性が暴走的に活性化することが観察された。それに対し内腕ダイニンは、外腕-内腕ダイニン間連絡の破壊により活性が低下し、その結果としてic2N変異株は鞭毛打の振幅が大幅に減少した。内腕ダイニンは少なくとも10種類に分類されるが、ic2N変異株ではその内のIDA eの活性が低下していることが遺伝学的解析により明らかになった。この結果は、外腕ダイニンからIC2とDRC4を経由して内腕ダイニンIDA eへ機能的連絡が存在することを示唆している。 以上の結果から、我々は外腕-内腕ダイニン間連絡が外腕ダイニンと内腕ダイニンの両方を制御するハブ装置であることを明らかにした。鞭毛の中央制御装置を発見した今回の研究は、不妊、気管支疾患、水頭症、内臓逆位といった鞭毛関連疾患の研究の発展に寄与することが期待される。
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