2012 Fiscal Year Research-status Report
長時間全原子シミュレーションによるタンパク質揺らぎの解明
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23770180
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
渕上 壮太郎 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 助教 (00381468)
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Keywords | 生物物理 / 蛋白質 / シミュレーション / 揺らぎ |
Research Abstract |
前年度,リジン・アルギニン・オルニチン結合タンパク質(LAO)のシミュレーション結果を「時間構造をもとにした独立成分分析(tICA)」によって解析し,LAOの遅い運動の様相を明らかにした.このような運動は,その発生の有無・頻度がシミュレーションごとに異なることが予想されるため,今年度はまず,複数シミュレーションの比較によってタンパク質揺らぎの複雑多様な実態を解明することを目指した. 1マイクロ秒のシミュレーションを3回実行したところ,いずれにおいても100ナノ秒オーダーの遅いドメイン運動が観察された.tICAによってLAO主鎖の遅い運動を抽出したところ,その結果は3回のシミュレーションで大きく異なっており,揺らぎの多様性が明らかとなった.一方,複数のシミュレーションで共通する遅い局所運動もみつかった.このような再現性のある運動をする部位は,機能発現にとって重要である可能性が高いと考えられる. 続いて,前年度の解析で特定されたLAOの遅い運動の鍵となっていそうなアミノ酸残基をアラニンに置換した変異体,K186AとF233A,についてシミュレーションを実行し,変異の影響を調べた.その結果,変異体K186Aでは,構造がリガンド結合型の方向に大きく変化する様子が観察された.置換した残基は,野生型においてドメイン間に跨った塩橋を形成しており,この塩橋の消失が原因であったと考えられる.一方,変異体F233Aではこのような構造変化は起きていなかった. さらに,2つ目のターゲットとして,LAOと同じファミリーに属し,基質の結合にともない大きな構造変化を示すタンパク質であるマルトース結合タンパク質(MBP)を取り上げ,LAOとの共通性やMBPの独自性を明らかにすべく,長時間のシミュレーションを実行した.LAOと同じく,MBPも100ナノ秒オーダーの遅いドメイン揺らぎを示すことが確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画では,リジン・アルギニン・オルニチン結合タンパク質(LAO)をターゲットとした2つの課題: ①LAOのシミュレーションの複数回実行とtICAによる比較解析,② LAO変異体のシミュレーションの実行と変異の影響解析,および,2つ目のターゲットであるマルトース結合タンパク質(MBP)の長時間シミュレーションの実行,という課題に取り組む予定であったが,これらのいずれも予定通り実行することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き,リジン・アルギニン・オルニチン結合タンパク質(LAO)とマルトース結合タンパク質(MBP)のシミュレーション結果の解析を進めるとともに, tICAの有用性のさらなる確認,および,解析手法としての確立を図るとともに,タンパク質揺らぎの実態解明,動的機構の理解を目指す.予定している主な内容を以下に示す. ① MBPの長時間シミュレーション結果のtICAによる解析: MBPはLAOと同じファミリーに属し,基質の結合にともない大きな構造変化を示すタンパク質である.したがって,MBPのタンパク質揺らぎにはLAOと共通の特徴・メカニズムが存在することが期待される.一方,構成アミノ酸残基数は大きく異なることから,タンパク質揺らぎの全体像は大幅に違っている可能性が高い.以上のような点を明らかにするため,MBPの長時間シミュレーション結果に対して,tICAをベースとしたタンパク質揺らぎの解析を行う. ② MBP変異体のシミュレーションとその解析:MBPの揺らぎの鍵となるアミノ酸残基を推定し,変異体のシミュレーションを実行する.得られた結果を野生型の結果と比較することによって,変異の影響を調べるとともに,同定部位の機能発現における重要性を検討する. ③ 新規ターゲットへの展開: 余力があれば,本研究で提案する手法を他のタンパク質系にも適用し,タンパク質揺らぎと機能発現機構の解明に挑戦する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費は,データの保存・解析のため,ファイルサーバ(30TB以上のディスク領域をもつ計算機),および,消耗品に使用する予定である. 国内旅費は,日本物理学会年会および分子科学討論会における研究成果の発表のために使用する予定である. 外国旅費は,Biophysical SocietyのAnnual Meetingにおける研究成果の発表のために使用する予定である. 謝金は,投稿論文の英文校閲と実験家からの専門知識の提供に対して支払いを行う予定である.
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Research Products
(4 results)