2012 Fiscal Year Annual Research Report
細胞サイズのプロテオリポソームを用いた人工分泌細胞の刺激―分泌連関
Project/Area Number |
23770181
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
田所 哲 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (20389109)
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Keywords | SNARE / 開口放出 / 人工細胞 / リポソーム |
Research Abstract |
申請者はこれまでに、細胞サイズの巨大リポソーム(GUV)に分泌小胞サイズの微小リポソーム(SUV)を含有させ、外部からCa2+を流入させることで、SUV内の水溶性の蛍光色素を外部に分泌する人工開口放出系の構築に成功している。本研究では、実際の細胞において開口放出に寄与するタンパク質を導入したり、脂質の組成を検討することで、より高効率の人工開口放出系へと改良することを目的とした。 開口放出過程においてCa2+は重要な役割を果たしている。そこで、マスト細胞の開口放出のCa2+センサー分子と考えられるシナプトタグミン2の役割について検討を行った。その結果、シナプトタグミン2そのものはSNAREに結合することで開口放出の膜融合を抑制するが、Ca2+を感知したシナプトタグミン2は、ホスファチジルセリンと結合して、開口放出の膜融合を著しく促進することを明らかにした。上述の結果をふまえて、人工分泌細胞の構築を試みた。昨年度までに、油中水滴法を改良して、GUVにSNAP23/syntaxin3を組み込むことに成功している。そこで今年度は、VAMP8-SUVとシナプトタグミン2を内包する人工分泌細胞の構築を試みた。しかしながら、SUVを内包するGUVを作製する過程で、水層に懸濁したSUVが油層と接触することで崩壊してしまい、SUV-GUV間で引き起こされるSNARE依存的な膜融合を評価するまでには至らなかった。今後、SUV膜表面の親水性を高めることで、SUVと油層の接触を妨げる等の工夫が必要になるものと考えられる。 本研究により、マスト細胞の開口放出の膜融合には、タンパク質やCa2+のみならず、脂質分子も極めて重要な役割を果たしていることを明らかにすることができた。これらの結果は、系を単純化したリポソームを用いたからこそ明らかにできたものであり、開口放出の分子機構の解明に寄与するものと考える。
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Research Products
(11 results)