2011 Fiscal Year Research-status Report
スプライシングアイソフォーム間の機能部位の差異推定法の開発
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23770187
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
塩生 真史 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 講師 (30345847)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 理論生物学 / バイオインフォマティクス / 選択的スプライシング / 次世代シーケンサー / 立体構造予測 |
Research Abstract |
1. スプライシングバリアントの発現情報解析:公開されているヒトのRNA-seqのデータを用いて、これまでに開発してきた選択的スプライシングのデータベースであるAS-ALPSに登録されているゲノム、および、転写産物の塩基配列に対するマッピングを行った。その結果、タンパク質の機能部位や疎水性コアが欠損しているスプライシングアイソフォームをコードするスプライシングバリアントであっても、NMDにより分解されることなく、組織特異的に発現している例を確認できた。また、RNA-seqのデータをゲノム上にマッピングした結果については、AS-ALPSから閲覧できるようにインターフェースを構築した。これにより、AS-ALPSに登録されているスプライシングバリアントが、どの組織で多く発現しているかについて、ユーザーが容易に調べられるようになった。2. 高等真核生物における選択的スプライシング情報の収集:ヒトとマウスに加えて、ショウジョウバエ、線虫、シロイヌナズナ、イネの全ゲノムデータおよび転写産物データを用いて、AS-ALPS構築に用いたパイプラインにより解析を行い、選択的スプライシング情報の収集を行った。得られた結果を用いて生物種間で位置が保存された選択的スプライシングにより影響を受ける部位の解析を行ったところ、疎水性コアが変化することでタンパク質立体構造が不安定化すると考えられる場合であっても、複数の生物種間で保存されている場合が多数見られた。また、収集した選択的スプライシングの情報、およびそれらの保存性の情報は、AS-ALPSから閲覧できるようにした。1.および2.の解析により、スプライシングアイソフォームの重要性をmRNAの発現情報および生物種間の保存性の情報により見積もるアルゴリズムの基礎を構築でき、さらに、立体構造の不安定化が機能の多様化に寄与している例が多いことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題は、高等真核生物において多数生じているスプライシングアイソフォーム間の機能の差異をバイオインフォマティクスにもとづいて推定することを目的としている。特に、タンパク質の立体構造が不安定化すると考えられるスプライシングアイソフォームがデータベース中から多く見つかるにもかかわらず、その生物学的な意義が分かっていないものがほとんどであることに着目している。そのため、平成23年度は、それらのアイソフォームの重要度を推定するアルゴリズムの開発を中心に行った。研究計画に挙げたスプライシングバリアントの発現解析、および、選択的スプライシングの保存解析にもとづいたスプライシングアイソフォームの生物的な重要度を見積もるアルゴリズムについて、その基礎を作成することができた。よって、おおむね順調に目標を達成していると考えている。一方で、見積もった重要度を実験的に知られている事実に照らし合わせて妥当性を検証することについてはまだできていない。そのため、平成24年度は、この点についても推進して行く。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に開発したアルゴリズムを用いて重要度が高いと推定された立体構造未知のスプライシングアイソフォームについて、実験的なデータが得られているものについては、推定結果の妥当性を検証する。さらに、それらについて選択的スプライシングによる影響の度合いや、disorder予測の結果に基づいた立体構造推定の難易度により分類を行う。その結果、立体構造推定が容易と判定されたスプライシングアイソフォームについては、通常のホモロジーモデリング法と同じ手順により立体構造推定を行う。また立体構造推定が困難と判定され、disorder領域が少ないスプライシングアイソフォームについては、立体構造環境の適合度を加味したアラインメントを行い、そのアラインメントに基づいてホモロジーモデリングを行う。さらに推定したモデル構造は分子動力学シミュレーションにより構造安定性を評価するなどして、信頼性の高いモデル構造であるかを確認する。以上により推定された立体構造と、実験的に決定されている同じ遺伝子由来の別のスプライシングアイソフォームの立体構造に基づいて、アイソフォーム間の機能部位の違いを比較し、生化学的な機能の差異について解析を行う。また、これらの解析結果を一般ユーザーが閲覧することができるインターフェースをAS-ALPS上に構築する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現在査読審査中となっている論文の投稿が当初の予定よりも遅れたこと、および、スプライシングアイソフォームについて実験的に機能が調べられている例の情報収集が始められなかったことなどにより、一部の予算を平成24年度に繰り越した。これらについては、平成24年度の7月までに使用する予定である。また、交付申請時に平成24年度に請求する予定であった研究費については、以下のような使用計画を立てている。(物品費)老朽化したPCの買い替え、および、データバックアップ用の大容量NASを7月までに購入する。(旅費)6月、および、12月に国内学会において成果報告を行う。(人件費・謝金)既知スプライシングアイソフォームについての情報収集を8月~12月に依頼する。(その他)新たな論文の投稿を10月までに行う。
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