2011 Fiscal Year Research-status Report
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23770200
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
福田 綾 筑波大学, 医学医療系, 助教 (50436276)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 転写制御 / RNA結合タンパク質 / コアクチベーター / メディエーター |
Research Abstract |
当研究で c-fos遺伝子の新規転写コアクチベーターとして同定したhnRNP R (heterogeneous nuclear ribonucleoprotein R) は、既知の転写コアクチベーターであるメディエーター複合体と協調して転写を促進する。hnRNP R は 633アミノ酸の RNA 結合タンパク質で、複数のRNA結合ドメイン(3つの RNA Recognition Motifs (RRMs) と RGG ドメイン)のほか、酸性アミノ酸領域やグルタミン-アスパラギンに富んだ領域などを有する。メディエーターとの協調的な転写促進活性に必要なドメインを明らかにするため、hnRNP R の欠失変異体を調製し、in vitro 転写反応に加えたところ、RGG ドメインあるいは酸性領域を欠失させた変異体において転写促進活性が消失することがわかった。RGG ドメインの欠失はメディエーターの存否に関わらず、hnRNP R の転写促進活性を消失させることから、hnRNP R の活性自体に非常に重要なドメインであることが示唆された。一方、酸性領域の欠失は hnRNP R とメディエーターによる協調的促進を消失させることから、両者の機能的相互作用に重要な役割を担っていることが示唆された。また、hnRNP R の転写促進活性における RGG ドメインの重要性に加え、当研究ではこれまでに hnRNP R が転写産物 RNA と直接結合することを明らかにしている。これらのことから、hnRNP R による転写促進には転写産物 RNA との結合が重要なのではないかと考えた。hnRNP R による転写促進と RNA 結合との関連を調べるため、修飾ヌクレオチドを用いて hnRNP R に結合できない RNA の合成を試みるなど、現在さまざまな検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、「hnRNP R による RNA結合と転写促進活性の解析」および「hnRNP R の機能ドメインの同定および転写活性化における役割の解明」を中心に研究目標を立て実験を行ってきた。予定していた研究計画のほとんどを実施し、メディエーターとの協調作用に重要なhnRNP R ドメインの同定等を行った。RNA結合と転写促進との関連についても、固定化した鋳型を用いたアッセイや修飾ヌクレオチドなどを用いた実験などを行い、ひき続き検討中である。以上のことから、現在までの達成度は概ね順調に進んでいると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ひき続き hnRNP R による RNA 結合と転写促進活性との関連について調べるとともに、当初の予定通り「メディエーター複合体の主要サブユニットの解析」と「In vivo における hnRNP R の機能の解明」に取り組む。メディエーターはさまざまな遺伝子の転写制御に重要な役割をもつ普遍的コアクチベーターとして知られているが、30個以上もサブユニットがあるうえ、組成の異なる部分複合体もいくつか存在し、制御メカニズムは未知の部分が多い。特に、当研究で見出した2回目の転写を促進する機能に関してはほとんど解析されていない。サブユニット組成の異なるメディエーター様複合体を単離し、hnRNP R との協調的転写活性化を担うサブユニットの同定と機能解析を行う。メディエーターに関する解析については Conaway 博士(米国)との共同研究として行う予定である。 さらに in vivo における hnRNP R の機能を解明するため、培養細胞を用いて hnRNP R を siRNA でノックダウンし、c-fos 遺伝子の発現誘導に与える影響を調べる。c-fos 以外の前初期遺伝子や、恒常的に発現しているハウスキーピング遺伝子等への影響についても検討する。さらに、転写活性化に伴う hnRNP R の遺伝子上での局在変化をクロマチン免疫沈降により解析する。当研究ではすでに anti-hnRNP R 抗体を作製し、免疫沈降に使用可能なことを確認している。メディエーターの局在変化についても併せて解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度前半は東日本大震災および度重なる余震により、RI 施設や細胞培養設備等が通常通り使用できず、計画通りに実験が行えなかった。そのため、アイソトープや培地、血清などの使用量が減少し、繰越金が発生した。次年度はこれを利用して培地や血清などを購入し、ひき続き細胞の大量培養を行う。また、集めた細胞から核抽出液を調製し、種々のカラムやアフィニティーレジンを用いて実験に必要な転写因子等を精製する。さらに、当初の計画通り、siRNA を用いたノックダウン実験も行う予定である。合成 siRNAやトランスフェクション試薬、RT-qPCR 用の試薬類は高価なものが多いため、研究費の大部分をこれに費やす。また、hnRNP R のノックダウンの影響を出来るだけ広範な遺伝子発現について解析するため、合成オリゴ DNA を多数作製する。さらに、得られた研究成果を発表するための論文投稿および学会参加旅費などにも研究費を使用する予定である。
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Research Products
(3 results)