2011 Fiscal Year Research-status Report
植物が独自に獲得したDNAダメージチェックポイント機構の解明
Project/Area Number |
23770207
|
Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
愿山 郁 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 研究員 (10346322)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | DNAダメージ / チェックポイント / DNA修復 / 植物 |
Research Abstract |
SOG1と相互作用するタンパク質の探索 SOG1転写因子は、他の転写因子と相互作用し、その活性を調節している可能性が考えられる。そこで、Yeast-two-hybrid法を用いてSOG1と相互作用する因子の探索を行うため、Bait vector側にSOG1cDNAの全長、あるいは断片化したSOG1がクローニングされたもの、pray cloneとしてシロイヌナズナの転写因子が一つずつクローニングされ、混合された転写因子ライブラリーを用いた。その結果、TIFY2A転写因子とAt5g05120転写因子(機能未知)がSOG1の中央部分と強く結合する候補として得られた。これらの転写因子がDNAダメージレスポンスに関与している報告はまだないが、これらの候補遺伝子の変異体がDNAダメージに対してsog1-1変異体のような表現系を示すのであれば、これら相互作用因子がSOG1と協調して機能している事を意味するため、DNAチェックポイントに関与する新たな遺伝子であることを示すことができる。SOG1タンパク質修飾の解析 genomic SOG1のC末端に10xmycタグを結合させたコンストラクトが導入された植物体を構築し、SOG1タンパク質をmyc抗体を用いたウェスタンブロットで容易に確認できる系を確立した。この植物体を用いる事によって、DNAダメージ依存的にSOG1が高リン酸化され、このリン酸化にはDNAチェックポイントの中で働く主要因子であるATMリン酸化酵素が関与している事が明らかになった。以前の結果から、SOG1は動物のガン抑制遺伝子p53とアミノ酸配列的な類似性は認められないが、その機能はp53と共通点が多いことが報告されていた。今回の結果から植物SOG1の活性化メカニズムに関しても、動物のp53と類似している事が明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「SOG1と相互作用する因子の探索」に関しては、yeast-two-hybrid法を用いた解析を先行して行っているが、SOG1-myc植物体からSOG1を抗体で免疫沈降させ、SOG1と複合体を形成している因子をMASS解析で同定する方法も同時に進行している。「SOG1タンパク質修飾の解析」に関しては、SOG1がDNAダメージにレスポンスして高リン酸化されていること、またそのリン酸化にはATMが関与する事を明らかにした。これらの研究は予定通り進行している。「SOG1により転写誘導されるターゲット遺伝子の同定」に関しては、クロマチン免疫沈降と次世代シークエンサーを用いた方法で行う予定であったが、この実験を行う際に、確実にSOG1が転写を誘導しているとわかっているポジティブコントロールが必要であり、まずはそのターゲット遺伝子を同定する必要がでてきた。そこで現在は、ポジティブコントロールとなるターゲット遺伝子の同定中である。まずは、マイクロアレイの結果から、DNAダメージを与えた後、SOG1依存的に転写誘導が生じている遺伝子をいくつかピックアップし、クロマチン免疫沈降+PCR法を行う事で、SOG1が直接転写を誘導している遺伝子を見つけ出す必要がある。そしてそれをポジティブコントロールとしてクロマチン免疫沈降と次世代シークエンサーを用いた方法により、SOG1の直接的なターゲット遺伝子を網羅的に解析する。
|
Strategy for Future Research Activity |
「SOG1により転写誘導されるターゲット遺伝子の同定」に関しては、ポジティブコントロールが見つかり次第、クロマチン免疫沈降+次世代シークエンサーを用いてSOG1が直接転写をコントロールしている遺伝子を同定する。得られた遺伝子の転写調節領域からコンセンサス配列を見つけ出し、実際に、そのDNA配列にSOG1が結合するかどうかをゲルシフトアッセイで確認する。最終的に、SOG1が直接転写を誘導している遺伝子が決定出来たら、その結果から、DNAチェックポイントのシグナルがどのように伝わり、植物体がDNAダメージに対してそのように対処しているかの手がかりが得られると考えられる。「SOG1と相互作用する因子の探索」については、今年度中に共免疫沈降+MASS解析を行い、DNAダメージに依存してSOG1と結合する因子を同定する。その候補遺伝子が、植物細胞内で結合してるかどうかを可視化するために、BiFC (Bimolecular fluorescent complementation)法を用いても検討する。結合する因子が同定されれば、それらの変異体においてDNAダメージチェクポイントが機能しているかどうかを、DNAダメージに対しての感受性試験や、転写レスポンスの有無、細胞周期の停止の有無を調べる事で検討する。「SOG1タンパク質修飾の解析」に関しては、SOG1の高リン酸化がDNAダメージレスポンスに重要な役割を果たしているのかを調べるために、SOG1のリン酸化サイトを同定し、そのサイトに変異を導入して、DNAチェックポイントが機能しているかどうかを確認する。また、逆にSOG1のリン酸化サイトにリン酸化をミミックしたアミノ酸で置換し、DNAダメージが存在しなくても常にSOG1がリン酸化されているような状況を作り出し、そのような状況が植物体に及ぼす影響についても検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
未使用額が生じた要因は、研究の進捗状況に合わせ、予算執行計画を変更したことに伴うものである。次年度は免疫沈降法+次世代シークエンサーを用いた解析を行うための費用がかかることが見込まれる。また共免疫沈降やSOG1タンパク質の修飾解析など、タンパク質を扱う実験が多くなるため、抗体やウェスタンブロットに必要な試薬などのタンパク質解析関連の消耗品が必要になってくる。SOG1のリン酸化サイトに変異を導入する必要もでてくるので、変異導入や、作製した植物体の遺伝子型確認のためのオリゴDNAの購入を予定している。また、植物の維持や栽培に必要なプラスチック器具も購入する。今年度が最終年度になるため、国内と海外学会に参加し、本研究の成果発表や最新情報の収集、そして多くの研究者との意見や情報を交換することで、論文投稿の準備も兼ねたいと考えている。また論文を投稿する際に、論文投稿料と英文校閲料も必要となると考えている。
|