2012 Fiscal Year Annual Research Report
植物が独自に獲得したDNAダメージチェックポイント機構の解明
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23770207
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
愿山 郁 京都産業大学, 総合生命科学部, 特定研究員(PD) (10346322)
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Keywords | DNA損傷 / DNA修復 / 植物 / DNAダメージレスポンス |
Research Abstract |
DNAダメージチェックポイントとは、DNA上のダメージをモニターし、それらの問題が解決されるまでのあいだ細胞周期の進行を止める重要な仕組みである。細胞がチェックポイントを失うと、ゲノム上の問題が解決されないまま細胞周期が進行してしまうため、ゲノムを安定に維持出来なくなる。これまでに我々はシロイヌナズナにおいて、DNAダメージレスポンスにおいて主要な役割を担っている転写因子SOG1を同定し、その機能解析を行ってきた。SOG1は植物だけに存在するDNAダメージチェックポイント因子としては初めて同定された因子である。本研究では、SOG1の活性化メカニズムの解明に焦点を絞り解析を行った。その結果、シロイヌナズナのDNAにダメージが生じるとSOG1はATMリン酸化酵素依存的に高リン酸化されること、さらにSOG1のリン酸化は、細胞周期の停止、DNAダメージ依存的な遺伝子発現の誘導、さらにプログラムされた細胞死を引き起こすのに重要な事を明らかにした。以前に我々は、植物におけるSOG1の働きが、動物ガン抑制遺伝子p53と似ている事を示したが、本研究により、植物SOG1の活性化メカニズムについても、動物p53と大変似通っていることが明らかになった。SOG1とp53は、アミノ酸配列が全く異なるタンパク質であるにもかかわらず、機能や活性化メカニズムに多数の共通点が認められることは大変興味深い。植物は進化の過程において、p53とは異なるSOG1を獲得する必要があったことを意味しており、さらなるSOG1の解析によって、植物が独自に獲得したDNAダメージチェックポイントの解明が期待される。
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