2011 Fiscal Year Research-status Report
ダメージを受けたDNA複製フォークの修復機構の解明
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23770208
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
花田 克浩 大分大学, 医学部, 助教 (90581009)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | DNA損傷・修復 |
Research Abstract |
本研究課題では、DNA修復に関与している構造特異的エンドヌクレアーゼの1つであるMUS81-EME1に注目し、その機能を制御しているメカニズムを生化学的、細胞生物学的に解明することを提案した。MUS81-EME1は、DNA複製フォークがDNAストレスにより停止した際、その複製装置を再スタートさせるために必要な因子である。したがって、MUS81-EME1が正常に機能しなければ、DNA複製が完結しないまま細胞分裂を開始するため、染色体異常を引き起こす。さらに、Mus81の機能が異常なノックアウトマウスでは癌(リンパ腫)が高頻度に発症する。我々は、MUS81-EME1が担う癌抑制遺伝子としての役割を理解したいと考え、本研究課題を提案した。当該年度は、まず、MUS81-EME1と相互作用する因子を免疫共沈で同定した。この研究から、我々は興味深い因子を同定することに成功した。そこで、現在は、精製したMUS81-EME1タンパク質を用いて、その因子との関係を、生化学的手法を用いて解析している。また、次年度に行う予定である細胞生物学的解析に向け、遺伝子発現ベクターを構築した。現在、細胞へトランスフェクションを行い、安定発現細胞株の取得を試みている。また、ヒト遺伝病患者由来の細胞を用いた解析やsiRNAを用いた解析も企画している。次年度は、分子レベルから細胞レベルで総合的な解析を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の主要目的は、ダメージによって中断した複製フォークの修復においてMUS81-EME1がどのように制御されているかを解明することである。その点において、当該年度内に、MUS81-EME1と相互作用する因子を同定できた点、さらに、精製したMUS81-EME1タンパク質を用いた生化学解析を開始できた点から、おおむね順調に研究が進んでいると考えている。また、次年度へ向けて、細胞を使った研究の準備も整ってきており、今後の細胞とタンパク質の両方を駆使して研究を進めていく予定である。やや遅れているため重点的に取り組む必要がある点は、MUS81-EME1に依存しない経路のスクリーニングである。MUS81遺伝子を破壊しても細胞は生存できるため、MUS81に依存しない経路が存在すると考えられる。そこで、MUS81-EME1に依存しない新規の経路の同定を目指して解析を行っている。新規の因子が同定できない場合は、酵母を用いた遺伝学的研究から指摘されているいくつかの遺伝子(RecQ遺伝子など)に焦点を絞り解析していきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方策として、まず、MUS81-EME1と相互作用するタンパク質を精製して、in vitroにてMUS81-EME1のヌクレアーゼ活性を促進するか検証する。MUS81-EME1タンパク質はすでに精製しており、活性測定条件などは決定している。今後は、新規因子を加えた後、どのようにMUS81-EME1タンパク質の活性が変化するか詳細に検証していきたい。さらに、MUS81-EME1の活性は、パルスフィールド電気泳動を用いることで細胞レベル(in vivo)の解析が可能となる。したがって、in vitroおよびin vivoで、新規因子とMUS81-EME1との関連性を検証する予定である。 最後に、上述の通り、MUS81-EME1に依存しない経路を同定するべく、スクリーニングを行いたいと考えている。基本的には、siRNAライブラリーで特定の遺伝子発現を抑制するというやり方を実施するが、高価な試薬であるためすべての遺伝子を網羅できるほど大規模なスクリーニングは不可能である。今後、100前後の候補遺伝子を解析する予定であるが、その中から新規因子が同定できなかった場合はRecQホモログとMUS81遺伝子との関係について解析する方向へ方針転換する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、研究計画書に示した通り、細胞培養関連、分子生物学関連の消耗品を中心とした物品を引き続き購入し、上記に挙げた実験を遂行する。その見積額を「物品費」として計上した。昨年度の物品費の残金(繰越金)はそのまま「物品費」に計上する。さらに、研究データが蓄積されてきたため、成果発表の場としての学会参加や、研究打合わせや必要に応じて共同研究の実験実施を想定した金額を「旅費」として計上した。さらに、蓄積されてきたデータの整理や、MUS81-EME1に依存しない経路のスクリーニングなどを補助してくれる人材を確保したいと考えているので、「人件費(謝金)」を計上した。最後に論文投稿費用、英文添削、委託実験などを行う「その他」の予算を計上した。
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Research Products
(3 results)