2011 Fiscal Year Research-status Report
DNA相同組換えにおけるRad51フィラメントの新規制御機構
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23770212
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
黒川 裕美子 国立遺伝学研究所, 分子遺伝研究系, 特任研究員 (10381633)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 相同組換え / 修復 / DNA / Rad51 / ヘリカーゼ / ユビキチン |
Research Abstract |
正常な野生型細胞においてはDNA相同組換えの反応は非常に高い正確性をもって完了している。中心的役割を担うRad51タンパク質に着目し、その反応制御機構を明らかにすることで、相同組換え反応の高度なクオリティコントロールのメカニズムを理解したい。これまで分裂酵母Fbh1 がヘリカーゼ活性及びユビキチンリガーゼ活性を二重に駆使しRad51 リコンビナーゼに阻害的に作用すること、一方でSfr1-Swi5メディエーターはRad51フィラメントに直接結合し安定化することで反応を促進することを見出した。これらがどのように働き合い、高度な反応の正確性を生み出すのか、分子メカニズムを試験管内アッセイ系を用いて明らかにするため、平成23年度はアッセイに必要なタンパク質群の大量発現・精製に重点を置いた。 Rad51フィラメントに作用すると考えられるヘリカーゼSrs2、Rph1に関しては大腸菌での発現・精製が非常に困難であることがわかった。現在昆虫細胞発現系を検討しているところである。メディエーターであるRad55-Rad57複合体に関しては、文献等から精製が困難であると考えられていたが、今回発現条件を詳細に検討することで大腸菌でも発現・精製が可能であることがわかった。カラムクロマトグラフィーを駆使しアッセイに必要量の精製タンパク質を得ることに成功した。得られたRad55-Rad57を用い、Sfr1-Swi5との比較実験等のRad51フィラメントに対するアッセイを現在進めている。 Rad51のユビキチン化の解析に関しては、分裂酵母を用いた解析用の株が準備でき、解析しているところである。またin vitroでユビキチン化したRad51の機能解析に関しては、ユビキチン化効率が低いことから精製が難航し解析の障壁となっていたが、今回、新たな知見としてユビキチン化が促進される条件を見出すことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度は当初より試験管内アッセイ系のための材料準備に重点を置くことを計画していた。Fbh1ヘリカーゼとの機能比較をする予定であったSrs2とRqh1の発現・精製が現段階で完了していないのは残念だったが、昆虫細胞での条件検討の結果、今後精製できる可能性が見出せたことは大きい。また、Sfr1-Swi5メディエーターとの比較実験を計画していたRad55-Rad57タンパク質については大腸菌で精製できることが明らかにできたのはこの分野において非常に大きな貢献となる。Rad55-Rad57は高等真核生物でも保存性が高く、歴史的にも注目度が高いタンパク質であり、Rad51の機能を明らかにする上で必要不可欠な存在であるが、タンパク質精製が困難とされていたことからこれまで生化学的解析が進んでいなかった。これが克服出来たことを高く自己評価している。Rad51のユビキチン化の解析については株の作製や条件検討の準備としては順調に進んでおり、今後の課題もクリアする方法も見えている。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度ではアッセイに必要なタンパク質の発現・精製が順調に進行できた。特にRad55-Rad57が精製できたことから、24年度ではRad55-Rad57を用いた解析を優先的に進めていこうと考えている。またSrs2、Rqh1の精製に関しても昆虫細胞系を用いて引き続き進めていく。ユビキチン化の解析についても株や解析の準備ができたことから本格的な解析に入る。 24年度の研究計画では"F b h 1 による制御メカニズムの普遍性を明らかにする"としてきた。これについても計画通り、分裂酵母同様にヒトのFbh1やRad51についてもタンパク質を精製し、アッセイする。精製方法がこれまでに確立できているため、順調に遂行できると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
4月1日付けで国立遺伝学研究所から東京工業大学に異動となった。これにより、当初予定していなかった研究環境のセットアップ費用として研究機器・消耗品費が多少必要になることが考えられる。さらに、研究の継続的推進のためには引き続き国立遺伝学研究所での解析・研究打ち合わせ等も必要となり、出張費用も増すと考えられる。しかし、23年度の結果からタンパク質発現・精製が比較的順調に進んでおり、24年度のアッセイ等に必要な費用と研究発表費用は確保できている。
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