2011 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリア由来活性酸素に依存した酸化ストレス応答機構の解明
Project/Area Number |
23770227
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渋谷 利治 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70448033)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / 活性酸素 / 酸化ストレス |
Research Abstract |
本研究目的「ミトコンドリア由来の活性酸素(以下mtROSと略す)による酸化ストレス応答機構の全容解明」を達成する手段としてミトコンドリア内でROSを人工的に誘導する実験動物培養細胞系(in vitro)及びin vivo解析を可能にする線虫トランスジェニック系をこれまでに構築した。平成23年度は、特にin vivo解析に重点をおき、以下の大変興味深い結果を得た。(1)線虫筋肉細胞内でmtROSを過剰産生させると、筋肉組織の破綻に伴う個体の行動異常が観察された。(2)mtROSにより線虫において顕著な発生(L1幼虫からAdultまでのDevelopment)の遅延が観察された。mtROSが線虫の個体発生に影響を与えるという事を直接的に示した報告はこれまでになく、申請者の確立した系を今後さらに継続することにより、mtROSの個体発生に対する生物学的意義ならびに、その分子メカニズムの解明へと発展していくことが期待される。また、ミトコンドリア病の一つであるミトコンドリア筋症は、ミトコンドリアの機能破綻から生じると考えられているが、その詳細なメカニズムはわかっていない。そこで、申請者の用いるトランスジェニック線虫はミトコンドリア筋症の病態モデルとして活用できる可能性を見いだした。 加えて、上記のmtROSにより誘発される発生遅延に対し抑制的な表現型を示す変異株のスクリーニングを実施した。これまでに、数種の変異株を単離しており、現在、その原因遺伝子の同定を試みている。今後、原因因子の同定を成功させる事により、mtROSの下流の分子カスケード(つまりは酸化ストレス応答機構)の全容解明に迫る。 さらに、現在、これまでに得た知見を国際学術論文として執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記「研究実績の概要」のとおり、mtROSの下流の分子カスケードに関与する因子を探索するための線虫実験系の作成に本年度成功した。また、現在、関連因子に変異を持つと予想される候補変異体を数種単離するに至っている。本申請計画で記した第一段階(系の確立)は達成しており、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の主目的は「関連因子の同定」にある。しかしながら、現在、まだ同定には至っておらず、今後の更なる研究が必要となる。具体的には、変異株の原因遺伝子の同定になるわけだが、この遺伝子の同定には幾つかの困難が予想される。1つは、申請者の単離した変異株の表現型が比較的弱いため、遺伝子の同定が難しいと思われる。そこで、今後、表現型をより鮮明に判別できるストレス誘導条件を再獲得することで、問題の解決を行う。2つ目は、線虫の遺伝学的手法により遺伝子を同定する事になるが、その場合、多くの時間を有する事が予想される。そこで、近年進歩した次世代シークエンスを取り入れることで、遺伝子同定までの時間の短縮を検討している。加えて、次年度内での学術雑誌への掲載を目指している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度同様に、試薬や培養に必要となる経費を研究費より使用する。また、次世代シークエンス等に必要となる経費を次年度の研究費より使用予定である。
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