2012 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリア由来活性酸素に依存した酸化ストレス応答機構の解明
Project/Area Number |
23770227
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渋谷 利治 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70448033)
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Keywords | 酸化ストレス / ミトコンドリア / 活性酸素 |
Research Abstract |
本研究目的「ミトコンドリア由来の活性酸素(以下mtROSと略す)による酸化ストレス応答機構の全容解明」を達成する手段としてミトコンドリア内でROSを人工的に誘導する実験動物培養細胞系(in vitro)及びin vivo解析を可能にする線虫トランスジェニック系をこれまでに構築した。特にin vivo解析に重点をおき、以下の大変興味深い結果を得た。(1)線虫筋肉細胞内でmtROSを過剰産生させると、筋肉組織の破綻に伴う個体の行動異常が観察された。(2)mtROSにより線虫において顕著な発生(L1幼虫からAdultまでのDevelopment)の遅延が観察された。mtROSが線虫の個体発生に影響を与えるという事を直接的に示した報告はこれまでになく、申請者の確立した系を今後さらに継続することにより、mtROSの個体発生に対する生物学的意義ならびに、その分子メカニズムの解明へと発展していくことが期待される。また、ミトコンドリア病の一つであるミトコンドリア筋症は、ミトコンドリアの機能破綻から生じると考えられているが、その詳細なメカニズムはわかっていない。そこで、申請者の用いるトランスジェニック線虫はミトコンドリア筋症の病態モデルとして活用できる可能性を見いだした。 上記のmtROSにより誘発される発生遅延に対し抑制的な表現型を示す変異株のスクリーニングを実施した。これまでに、数種の変異株を単離しており、現在、その原因遺伝子の同定を試みている。今後、原因因子の同定を成功させる事により、mtROSの下流の分子カスケード(つまりは酸化ストレス応答機構)の全容解明に迫る。加えて、神経ミトコンドリア特異的活性酸素発現のトランスジェニック線虫も樹立し、光操作により人工的に神経異常を誘導する事に成功した。この線虫は将来的にヒト神経変性疾患の最適なモデル生物として発展・応用することが期待される。
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