2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23770246
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中村 哲也 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (70506766)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 左右 / 非対称 / Pitx2 / ねじれ / BMP / ターニング / ルーピング |
Research Abstract |
脊椎動物の内臓臓器の形態は左右非対称である事が知られており、非対称な形態形成の機構はマウスを用いて詳細に解析されてきた。心臓や腸管は一つの管構造として発生するが、発生途中で左右非対称にねじれる事で、その形態と機能を獲得する(ルーピング)。またマウス胚は胚全体がねじれて一回転する事で他の動物と同じ発生様式をたどる(ターニング)。以上が左右軸形成の概略であり、Nodal のシグナル伝達に重要な役割を果たすCryptic のノックアウト胚では全ての臓器形態の左右非対称性がランダムに決まる。しかしPitx2 のエンハンサー領域にあASymmetric Enhancer(ASE) を欠損したマウスでは、左側板中胚葉で発現するPitx2 が消失し、肺の左右非対称な形態、大動脈と大静脈の走行位置の非対称性に異常が見られる。しかし、左右非対称な現象であるマウス胚のターニング、心臓のルーピング、腸管のルーピングといった「ねじれ」が起こる現象には異常がない(Shiratorietal.2006,Development)。胚に内在のBMP シグナルを消失させるため、Lefty2-3.3Kbp Creマウス(Lateral Plate MesodermとParaaxial mesodermで時期特異的にCreを発現する)とBMP rereptor type2 flox/-のマウスを交配させた。9.5 日胚で形態を観察したところ、上記の遺伝子型胚ではターニングの左右非対称性がランダムになっていた 事から、BMPシグナルが左右非対称性をPitx2非依存的にねじれを制御する因子である事がわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、非対称に発現するBMPリガンドの発現制御機構を知るために、エンハンサー解析を行う予定であったが、他の実験に時間がかかってしまい、実施できていない。 またBMPの下流でねじれを制御する分子を遺伝子スクリーニングにより同定する予定であったが、こちらもできていない状況である。全体としては前進しているが、申請書に記入した実験予定よりは遅れているので上記の評価である。
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Strategy for Future Research Activity |
BMP2,4,5 の発現制御機構を解析して、非対称に発現する機構を理解する。3種類の中でも特に左右差がはっきりしているBMP5 のエンハンサー領域を解析する。BMP5 の遺伝子座を含む約200kbp のBAC(Bacterial Artificial Chromosome)のBMP5 遺伝子座にLacZ を挿入し、BMP5 遺伝子周辺領域を欠失させてマウス受精卵にインジェクションする。卵を仮親に戻した後、8.0 日で再び回収してLacZ 染色を行う。これによりBMP5 の発現制御に重要な領域を特定する。BMP2,4 については、BMP5 と同じ発現制御を受けている可能性が高く、BMP5 の発現制御領域の同定後、コンピューターによるエンハンサー領域の比較を行い、制御領域の予測を行う。BMP シグナルの下流で形態のねじれを引き起こす因子を同定するために、各種変異マウスを利用して目的遺伝子のスクリーニングを行う。野生型マウスの左側板中胚葉と右側板中胚葉から細胞を切り出し、RNA を抽出し、Affymetrix 社のマイクロアレイによって左と右で発現量に差がある遺伝子を同定する。左と右から切り出す細胞は約100 細胞ずつであり、1cell cDNA ライブラリー法(Saitoh etal.2008,Repoted.Bio.Online)を応用して、少ないRNA 量をPCR で再現よく増幅する事により、マイクロアレにかける。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
エンハンサー解析のために購入、使用するマウスの費用と、遺伝子発現スクリーニングに使用するマイクロアレイに費用がかかる予定である。
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Research Products
(2 results)