2011 Fiscal Year Research-status Report
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23770250
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
日下部 りえ 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70373298)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 生殖細胞 / 生殖巣 / 進化 / 脊椎動物 / ヤツメウナギ / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
本研究の目的は、脊椎動物のなかで最も初期に分岐した円口類ヤツメウナギにおいて、始原生殖細胞の決定や初期分化に働く遺伝子を同定し、その機能を解明することである。平成23年度はヤツメウナギ胚から抽出したRNAを用いて、nanosなどを含む複数の生殖細胞のマーカー遺伝子を新規に単離し、in situハイブリダイゼーション法により初期胚における発現パターンを調べた。その結果、受精卵において数種類の母性mRNAが動物極側に局在し、卵割の進行に伴って、一部の細胞のみに受け継がれることを見出した。特にNanos mRNAは2細胞期の卵割面の細胞膜にアンカーされるように局在し、4細胞期において割球全体に拡散していく様子が観察された。 また、脊椎動物の始原生殖細胞の移動に必須なケモカインレセプターであるCXCR4相同遺伝子をヤツメウナギで同定し、発現パターンを調べたところ、神経胚後期の体幹部腹側において卵黄表面に点在する大型の細胞に発現が見出された。さらに、この遺伝子の上流ゲノム配列を同定し、GFPのコード領域をつないだ融合レポーター遺伝子を作製し、ヤツメウナギ受精卵に顕微注入し、蛍光を持つ細胞の挙動を観察することにより、この大型の細胞が始原生殖細胞であるという示唆を得た。 以上の知見から、これまで形態観察に基づく推測のみに依っていたヤツメウナギの生殖細胞の起源と挙動を、初期発生過程において分子レベルで解析する手がかりを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は研究開始すぐに複数の遺伝子の同定に成功し、in situハイブリダイゼーションによる発現解析へと進むことができた。ほぼ同時期にヤツメウナギの受精卵が入手可能な季節に入ったため、解析用の固定胚の入手などもスムースにできた。また大学院学生や新規に雇用した実験補助員との共同作業により、CXCR4遺伝子の上流領域の単離、それにGFP遺伝子を連結したレポーターコンストラクトの作製、さらにヤツメウナギ胚への導入も平行して行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度には、前年度に同定した生殖細胞関連遺伝子に関する知見を踏まえ、ヤツメウナギ胚を用いた遺伝子機能操作実験や割球除去実験をさらに発展させる(5~7月)。内容としては、3’UTRの機能解析用遺伝子コンストラクトを受精卵に注入し、GFPなどのレポーター遺伝子の発現を発生過程を追って観察する。また、翻訳を阻害するアンチセンスモルフォリノオリゴによる機能阻害実験を行う。基礎的な作業を担当する技術補佐員を雇用し、短期間で効率よく実験を進めたい。 上記の実験胚について、主に8月以降の期間を使って表現型を詳細に解析し、生殖細胞の形成過程における遺伝子の機能や、制御機構を明らかにする。得られた知見を脊椎動物の他系統およびホヤ、ナメクジウオでの研究成果と比較し、脊椎動物の初期進化における生殖細胞形成機構の変遷について考察する。得られた成果をとりまとめ原著論文発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の研究開始当初に遺伝子の同定を簡便な方法で進展させることができ、消耗品の購入を大幅に抑制することができた。平成24年度はこの成果をもとに、遺伝子の機能を詳細に調べるため、遺伝子解析用キット試薬、カスタム合成オリゴなど比較的高額な消耗品を購入する予定である。また技術補佐員については平成24年度も雇用し、効率的な解析を遂行する。
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Research Products
(7 results)