2013 Fiscal Year Research-status Report
生物個体における組織の相対的なサイズを制御する分子メカニズム
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23770258
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
林 貴史 国立遺伝学研究所, 個体遺伝研究系, 助教 (50553765)
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Keywords | insulin / IGF / bantam / IDGF / 増殖 / サイズ |
Research Abstract |
平成25年度は24年度に引き続きbantam microRNAとinsulin/IGFシグナルの成虫原基間における活性とサイズの間の関係の検証、およびimaginal disc growth factor(IDGF)の機能解析に関する実験を行った。bantamとinsulin/IGFに関しては成虫原基間における活性の違いを検出するシステムを構築したが、得られた形質転換体を用いて実験を行ったところ、十分な精度でシグナル量を定量化することが困難であったため、修正を加えたコンストラクトを作成した。現在はこれらのコンストラクトをハエに導入しているところであり、形質転換体が得られ次第、再度シグナルの定量化を試みる。IDGFに関しては、当初は相同な遺伝子がショウジョウバエゲノムに5個存在すると考えていたが、さらにもう1つ相同遺伝子が存在することが明らかになった。そこでこれら6つの遺伝子のいくつかを不活性化させるRNAiコンストラクトのシリーズを作成し、形質転換バエを作成した。その結果このRNAiを用いた実験では3個のIDGFを破壊してもほとんど表現型は認められなかったが、4個のIDGFを破壊した場合には組み合わせ次第でインシュリンシグナルを低下させた場合と似た表現型が観察された。この表現型は5-6個のIDGFを破壊した場合により顕著であった。RNAi実験では非特異的なoff target効果の結果としてこのような表現型が観察された可能性もあることから、RNAiの標的とならないcDNAを用いたレスキューコンストラクトを作成し、この可能性を排除することを試みる。現在までにすでにレスキューコンストラクトは作成済みであり、今後はこれらをハエに導入し、形質転換体を作成した後に、レスキュー実験を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度に申請時の研究計画には修正を加えたが、その後の実験は順調に進んでいる。insulin/IGFシグナルの成虫原基間における活性の違いを検出するシステムは、当初予想した通りには機能しなかったが、その失敗をふまえた新たなコンストラクトを作成しており、26年度の早いうちにシグナル量とサイズの関係を検証することが出来るはずである。IDGFに関する実験は、今のところ特に問題は無く順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
bantamとinsulin/IGFの成虫原基間における活性とサイズの間の関係については作成したコンストラクトを導入した形質転換体が得られ次第、シグナルと組織サイズの関係を調べる予定である。そしてこのアッセイ系がうまく働くことが示された後には、遺伝学的操作により増殖シグナルの量を様々に変化させた個体においても同様の実験を行う予定である。 IDGFについてはすでにRNAiを用いた遺伝子破壊実験で表現型が得られていることから、レスキュー実験によるoff target効果の検証が非常に重要な課題となっている。そのために25年度にはIDGF1-6のレスキューコンストラクトを作成しており、26年度はこれらの形質転換体を用いてレスキュー実験を行う。またIDGFはinsulin/IGFと相互作用するという可能性があることから、RNAiによりインシュリンシグナル伝達系に影響が出ているかどうかを検証する予定であり、加えてinsulin/IGFとIDGFが物理的に結合するかどうかの検証も行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度はbantamとinsulin/IGFシグナルの定量化と組織サイズの関係を詳しく調べる予定であったが、作成したシステムが予想通りには機能せず、その修正に終始したために試薬や抗体の消費が予想よりも少なかった。 26年度は当初の計画に加えて25年度に行う予定であったシグナルの定量化と組織サイズの関係の検証実験を行うため、抗体の使用量やDNAの合成量が増えることが予想される。そこで「次年度使用額」はこの部分にあてる予定である。
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