2011 Fiscal Year Research-status Report
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23770263
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Research Institution | Osaka Bioscience Institute |
Principal Investigator |
安永 桂一郎 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 神経細胞生物学部門, 研究員 (20534572)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 樹状突起 / 再編 / 細胞外基質 / プロテアーゼ / ショウジョウバエ |
Research Abstract |
本研究の目標は、神経回路が機能的に成熟するプロセスにおいて、樹状突起の可塑的形態変化が担う役割、およびその変化のメカニズムを理解することにある。そのために、ショウジョウバエの感覚ニューロンに着目して、樹状突起形態を単一ニューロンレベルで精緻に生体内観察できるイメージングシステムを確立した。さらに、この感覚ニューロンをその生涯に渡り観察する過程において、樹状突起の形態が、ハエ成虫が羽化してから24時間以内に、放射状から格子状へと劇的に再編されることを発見した。平成23年度では、この再編のメカニズムに下記3つの方向からアプローチした。 樹状突起の再編過程において細胞外プロテアーゼMmp2分子が示す挙動を可視化するために、GFP標識Mmp2を細胞内に定常的に発現させたが、分子の挙動を追跡することはできなかった。その原因がMmp2を定常的に発現させたためではないかと考え、現在では新たに、生体内での発現調節機構を再現できるGFP標識Mmp2ノックイン系統の作製を進めている。 再編を制御する基底膜分子を同定するために、再編の時期を通して細胞外基質を構成する様々な分子の分布を調査した。その結果、再編時に分布を変化させる細胞外基質分子syndecan, perlecanを新規に発見した。現在、これらの分子が再編を制御する可能性について検証している。 ショウジョウバエ全遺伝子を対象にしたRNAiスクリーンを約2500系統に対して実施しており、基底膜由来の再編シグナルの受容に関与する候補遺伝子が約15個単離されている。また、これと並行して、候補遺伝子の探索を別方向から進めるために、EMS処理により変異体を作製し、その表現型を調査している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1、Mmp2依存的な基底膜分解が時間的・空間的に制御されるメカニズムの解明を目指すプロジェクトについては、GFP標識Mmp2の作製およびそれの生体内ニューロンへの適用が既に実施されている。残念ながらこの系統は有用でないことが判明したが、代替となる新規のノックイン系統の作製が順調に進行している。2、ニューロン樹状突起の再編を誘導する基底膜分子群の同定を目指すプロジェクトについては、基底膜分子を対象に再編時に分布が顕著に変化するものを探索し、細胞外基質分子のsyndecan, perlecanを新規に発見することができている。事前に同定されていたcollagenIVと合わせて、今後、基底膜分子の変異体を使い、どの分子が樹状突起の再編に重要であるかを調査するための準備が整っている。3、樹状突起による基底膜由来の再編シグナル受容とその細胞内伝達経路の解明を目指すプロジェクトについては、RNAiスクリーンを約2500系統に対して実施しており、候補遺伝子を約15個単離している。これは計画通りのペースで進行しており、今後も引き続きRNAiスクリーンに取り組んでいくことで成果が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
1、樹状突起の再編過程において細胞外プロテアーゼMmp2分子が示す挙動を可視化するために、GFP標識Mmp2ノックイン系統を作製する。この系統を使い、Mmp2分子の挙動を詳細にイメージングする。このとき、赤色蛍光タンパク質mCherry標識collagenIV分子を発現する系統を使って、Mmp2と基底膜の動態を同時に2色イメージングすることにより、樹状突起の再編の過程においてMmp2が基底膜に作用する様子を解析する。2、再編を制御する基底膜分子を同定するために、平成23年度に発見した樹状突起の再編に伴って分布が変化する分子(collagenIV、syndecan、perlecan)の変異体の解析を進める。一方では、基底膜に作用して機能するWnt, ヘッジホッグ等のモルフォゲンやガイダンス分子が樹状突起の形態形成を制御することが報告されている(Singh et al., Development (2010) 137:1351-1360)。そこで、基底膜分子に加えて、これらの分子群にも着目し、その動態と変異体による機能解析を同様におこなう。3、樹状突起の再編において、樹状突起が基底膜の分解再編をどのように感知し、応答するかを明らかにするために、全遺伝子の網羅的探索をおこなう。具体的には、当初計画したRNAiスクリーンに加えて、EMSを利用した変異体スクリーンを実施する。こうすることで、より確実に候補遺伝子を網羅できると考えている。獲得された候補遺伝子が樹状突起の再編にどのように作用しているのかを調査することによって、樹状突起の再編を制御する分子間ネットワークを同定し、その作動原理を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
【消耗品】分子生物学実験では、PCR、シーケンス、制限酵素処理、組換えDNA構築、免疫染色、組織処理をおこなうための酵素、抗体、薬剤が必要である。また、これらの実験をおこなうために、ピペットチップ、エッペンドルフチューブ、遠沈管が必要である。ショウジョウバエ実験には、ハエ、餌、飼育ビンが必要である。これら物品の購入に研究費を使用する。【旅費等】平成24年度は日本発生生物学会(兵庫)と日本分子生物学会年会(福岡)にて成果発表をおこなう。国際学術誌に本研究成果を発表する。これらのため、旅費交通費と学術誌上での発表料に研究費を使用する。
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Research Products
(2 results)