2011 Fiscal Year Research-status Report
上皮陥入機構の解析:M期進入にともなう細胞形態変化の新たな役割
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23770264
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
近藤 武史 独立行政法人理化学研究所, 形態形成シグナル研究グループ, 研究員 (60565084)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | M期細胞球形化 / 上皮組織陥入 / ショウジョウバエ / 気管原基 / ライブ観察 |
Research Abstract |
本研究では、ショウジョウバエ胚の気管原基の陥入過程をモデル系に用い、ライブ観察と遺伝学的および薬理学的操作を融合させた解析を主軸として、M期進入に伴う細胞球形化の役割の解析を行っている。先行研究ではcyclin A(cycA)変異体を用いることによって、気管原基陥入過程で観察される細胞分裂期への進入を阻害することにより、陥入運動の遅延が見られることを明らかにしていた。今年度はまず、この表現型が本当にM期進入阻害による影響であることを確かにするために、double parked(dup)遺伝子の変異体を用いてcycAとは異なる機構によりM期進入を阻害した。その結果、dup変異体においても陥入遅延の表現型が観察され、M期進入が陥入促進に必須であることが明確になった。 次に、EGFRシグナル変異体では陥入第一段階は起こらなくなるが、その後細胞のM期進入を経て、陥入構造が形成される。このEGFRシグナル変異体で観察される陥入運動が実際に細胞分裂過程を必要とすることを証明するために、EGFRシグナル関連因子とcycAとの二重変異体を作製し解析を行った。この二重変異体では正常な陥入運動が引き起こされなくなったが、大幅におくれて陥入運動が開始することが明らかとなった。これは、後に気管細胞内で活性化されるFGFRシグナルによる陥入不全の代償機構の結果であった。さらに、EGFRシグナル、FGFRシグナルとcycAとの三重変異体では明確な陥入構造は形成されない一方で、EGFRシグナルとFGFRシグナルの二重変異体では陥入構造が形成される様子が観察され、詳細なライブ観察により、この変異体においてもM期細胞球形化が気管原基を引き起こすことが明らかとなった。これらの結果から、M期細胞球形化が既知のシグナル系とは独立に陥入を促進できることが証明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述の通り、23年度はいくつかの二重もしくは三重変異体を作製し、ライブ観察を行うことにより、これまでに知られていた既知のシグナル伝達系(EGFRとFGFRシグナル)に加えて、細胞のM期進入が気管陥入を引き起こすもう一つの重要な因子であることを証明できた。これらについては当初の計画以上の結果が得られたと考えている。一方で、同時に予定していたマイクロアレイ解析については23年度中に候補因子を得るまでに至らなかった。準備は進んでおり、24年度の早いうちに結果を得ることができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず24年度の早い時期に、マイクロアレイ解析によりtrh変異体とrho btl変異体でのトランスクリプトームを比較することにより、M期進入と同期した陥入第二段階に関与する新規遺伝子の候補を抽出する。得られた候補遺伝子に対して変異体を作成し機能阻害実験を行い気管形成における表現型を解析することにより、実際に気管原基陥入に関与する因子を同定する。トランスクリプトーム解析が遅れていることから、陥入前の気管原基細胞で発現することが知られている既知の遺伝子の変異体の解析の準備も進めており、これらの因子が気管原基の陥入運動に関与するかどうかも同時に検証する。 次いで、同定した新規遺伝子の変異体での陥入過程における気管原基の動態を、特にM期進入直前の細胞骨格構造と三次元細胞形態、および球形化の位置に焦点を当てて、ライブ観察を用いて詳細に解析する。また、EGFRシグナル系の変異体は陥入第一段階が起こらず、M期進入にともなう第二段階のみが観察されるので、正常個体と比較してよりシンプルに陥入第二段階で起こる現象を解析できると考えられる。これらの理由により、EGFRシグナル系の変異体と新規遺伝子の二重変異体の作成と表現型の解析を集中的に行う予定である。これらの解析を通じて、なぜ気管原基では細胞分裂過程を経ることにより陥入構造へと変換されるのか、さらには細胞分裂を繰り返す他の上皮組織はどのようにして平らな上皮組織を保っているのか、という問題を解決していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度研究経費の使用計画マイクロアレイ解析:300,000円その他遺伝子工学用キット、試薬:150,000円データ保存装置:200,000円国内外学会参加費:350,000円
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Research Products
(6 results)