2012 Fiscal Year Annual Research Report
タンガニイカ湖産シクリッドにおける生殖行動の多様化と精しょうタンパク質の進化
Project/Area Number |
23770270
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
守田 昌哉 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (80535302)
|
Keywords | 精しょうタンパク質 / 配偶行動 / 受精 / 遺伝子進化 / シクリッド / 精子 |
Research Abstract |
カワスズメ科魚類(以下シクリッド)の精液中には精しょう糖タンパク質SPP120が存在する。このタンパク質は、多くの糖鎖付加サイト、VWDドメイン、C8ドメイン、ZPドメインをもつ。推察されていた機能は、精液の粘性を上昇させるとともに、精子の運動を抑制すると報告されていた(Mochida et al2002)。またこのシクリッドに特徴的な行動として、口内受精行動がある(Mrowka 1987)。これは、雌が雄の生殖口から精液を口の中へ移動させたのち、産んだ卵を直ちに口に含み、受精が起こる行動である。この受精行動に対して、粘性および精子の運動抑制を起こすSPP120は口内に精液をとどめるといった観点から機能的である。一方で、種分化の過程で、口内受精行動を示さなくなった種も多くおり、このような種では、精液が受精する際にいち早く拡散し、精子の運動も即座に開始することが、受精成功に寄与すると考えられる。しかしながら、産卵行動の詳細な観察と、SPP120の分子進化の関係性は不明なままであった。そこで、産卵行動の観察と、様々な受精行動を示すタンガニイカ湖産シクリッドからSPP120の遺伝子を単離し、受精行動の変化に伴ってSPP120の機能変化が起こったか、非同義/同義置換率を指標に解析した。その結果、数ある口内受精行動を示さない種の中でも、雄が砂で半円状のbowerと呼ばれる産卵場所を作成する種では、野外観察から、雄は精液を雌の口内へ直接渡す訳ではなく、雌が卵を産卵する前に、雄はbower内に精子を放出し、その放出した精子を用いて受精が起きている可能性が高いことが判明した。さらに、このような受精行動の変化した種で、複数のコドンに特異的に非同義置換率が上昇していたこと(正の選択)が明らかとなった。今後、この正の選択がどのような機能変化を生み出したか、多角的に検証して行く予定である。
|
Research Products
(2 results)
-
[Journal Article] Alternative reproductive tactics in the shell-brooding Lake Tanganyika cichlid Neolamprologus brevis2012
Author(s)
Ota, K., Aibara, M., Morita, M., Awata, S., Hori, M and Kohda, M
-
Journal Title
Int. J. Evol. Biol
Volume: 10
DOI
Peer Reviewed
-