2011 Fiscal Year Research-status Report
社会性アブラムシにおけるゴール修復行動の分子・細胞・発生基盤の解明
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23770278
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
沓掛 磨也子 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 研究員 (90415703)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 社会性昆虫 / 兵隊アブラムシ / ゴール修復 / 体液凝固 / メラニン |
Research Abstract |
本研究では、モンゼンイスアブラムシの兵隊幼虫が示すゴール修復という社会行動に着目し、その成立基盤および進化について、分子・細胞・発生の多面的アプローチからの理解を目指すものである。今年度は、以下の研究を遂行した。(1)兵隊体内で特殊化し、ゴール修復に必要なタンパク質成分のほとんどを産生していると考えられる巨大顆粒細胞のRNA-seq解析をおこなった。その結果、巨大顆粒細胞においては、体液のメラニン化に関わる遺伝子や、その他の生体防御系に関わる遺伝子が多量かつ亢進的に発現していることが明らかになった。このことは、巨大顆粒細胞が血球に似た機能を有していることを示唆している。一方、この細胞は、脂質や糖の合成・分解に関わる遺伝子を高発現しているという新たな知見も明らかになった。これらの結果から、巨大顆粒細胞は、血球と脂肪体の両方の特徴を示すという可能性が示唆された。(2)兵隊分泌液の主要タンパク質成分のうち、未同定の高分子量タンパク質について、ショウジョウバエで体液凝固の基質タンパク質として知られるヘモレクチンである可能性について検討した。ヘモレクチン遺伝子のRT-PCR解析やRNA-seq解析の結果から、ヘモレクチン遺伝子がゴール修復に関与することを積極的に支持する結果は得られなかった。(3)兵隊分泌液の主要タンパク質成分として既に同定済みの、フェノール酸化酵素および内部繰り返し配列をもつ新規タンパク質について組織発現解析をおこない、いずれも巨大顆粒細胞において遺伝子発現していることが確かめられた。また、免疫電顕においては、内部繰り返し配列をもつ新規タンパク質は、タンパク質に翻訳後、細胞外に分泌される可能性を示す予備的な結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、当初の予定にはなかったRNA-seq解析を実施する機会に恵まれたため、ゴール修復にかかわる網羅的な遺伝子探索をおこなうことができた。その結果、これまでの実験結果を支持するデータとともに、非常に多くの新規知見を得ることができた。また、申請時に計画した実験についても着実に進めることができ、計画は順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、これまでの実験を引き続き遂行するとともに、今年度実施できなかった実験にも着手する。具体的には、RNA-seq解析で得られた結果の定量RT-PCRによる確認、巨大顆粒細胞における脂質や糖の局在解析、兵隊分泌液における未同定の高分子量タンパク質のアミノ酸配列解析および遺伝子同定、pull-out法によるアブラムシ類の体液凝固系に関わるタンパク質の同定などの実験を遂行する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、今年度同様に、おもに分子生物実験に必要な試薬や消耗品の購入や、学会参加およびアブラムシ採集のための旅費として使用する。特に次年度は、韓国で開催される国際昆虫学会への参加が決定している。また、タンパク質のアミノ酸分析は、設備などの実験環境が整っていないため、外注を予定している。
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Research Products
(8 results)