2013 Fiscal Year Research-status Report
古人骨のライフヒストリー研究の新展開―未成年人骨の生物考古学の確立を目指して―
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23770284
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
長岡 朋人 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (20360216)
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Keywords | 未成年 / 江戸時代 / 古人口学 / 古病理学 / 生物考古学 / 法医人類学 / 遺跡 / 死亡年齢推定 |
Research Abstract |
本研究では、未成年人骨の生物考古学的研究として、(1)大阪府堺市堺環濠都市遺跡喜運寺墓地から出土した未成年人骨を調査した。出土人骨の個体数推定は、頭蓋、骨盤、四肢長骨でもっとも残存する部位を最小個体数としたが、左右残存する部位については標識再補法に基づき、最尤個体数(本来の母集団を形成する個体数)を推定した。次に、本研究では歯の形成や萌出、四肢長骨の骨端の癒合、骨計測値に基づいて死亡年齢推定を行った。全身の部位でもっとも残存する部位は側頭骨であった。右107個、左107個であり、最小個体数は107体であった。左右各107個のうち、対で出土しているのは87対であり、この値から最尤個体数を算出すると126~136体(95%の信頼区間)であった。次に、側頭骨が残る107体のうち、歯や骨計測値から86体の死亡年齢の推定を行った。歯の残存しない個体については、側頭骨の計測値に基づいた回帰分析とベイズ推定から死亡年齢の推定を行った。その結果、出生前後の個体が占める割合が高く、埋葬人骨の95%以上が6歳以下であった。堺環濠都市遺跡から出土した江戸時代人骨の大部分は未成年であり、95%以上が6歳以下であった。(2)次に、未成年人骨の死亡年齢推定法を考案した。側頭骨錐体から1ヶ月単位で死亡年齢が推定できることを明らかにした。現在、論文を準備中である。(3)東海市長光寺から出土した江戸時代の未成年人骨の整理と分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
堺環濠都市から出土した江戸時代人骨に関する古人口学的研究に区切りをつけることができ、未成年人骨の年齢推定に関わる新知見が得られたが、長光寺の人骨の整理と分析は終了していない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、未成年人骨の死亡年齢推定法に関わるデータの解析を終わらせ、国際誌に論文を投稿する予定である。また、愛知県東海市から出土した未成年人骨の分析に着手する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
遺跡から出土した人骨を資料に分析を行うことを主眼とした研究ですが、資料の一部の人骨の発掘・整理が次年度に及びました。また、資料数が当初の予定よりも多く、資料の分析が完了しておりません。そこで計画を変更し、全資料ではなく、現時点で使用できる資料に限って整理と分析を行ったために未使用分が生じました。 未分析資料の分析を行い、論文の執筆を行います。資料は他機関に保管されているため資料分析のための国内旅費に用います。また、論文執筆を行って成果をまとめるため英文校正費用や論文投稿料に用います。未使用分はその経費に当てることにします。
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Research Products
(5 results)