2012 Fiscal Year Research-status Report
豊富な遺伝資源を活用した機能性成分の探索および生産性に関与する遺伝子の探索
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23780003
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
中西 弘充 信州大学, サテライト・ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー, 助教 (90443001)
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Keywords | 桑 / 1-DNJ / D-AB1 / α-グルコシダーゼ阻害物質 |
Research Abstract |
桑葉には1-deoxynojirimycin(1-DNJ)や1,4-dideoxy-1,4-imino-D- arabinitol(D-AB1)などのイミノ糖類が豊富に含まれている。これらのイミノ糖類は、α-グルコシダーゼ阻害活性(αGI活性)を有するため、機能性食品分野への応用が期待されている。これまでに、桑葉のαGI活性が桑品種や気温により変動することを明らかにした。また、桑品種ごとのイミノ糖類の組成についても調査してきた。しかし、桑葉のαGI活性含有量は実用に供するに充分とは言い難い。桑の栽培条件を工夫することで桑葉αGI活性を向上させることができれば、桑葉の産業的な利用価値向上につながると考え、植物栄養素の一つである窒素に着目し、窒素肥料投与によるαGI活性の影響を調査した。 尿素投与前の滞在ライ品種の葉(施肥前)と投与後の葉(施肥後)の抽出液を用いて、酵母由来およびラット消化管由来のα-グルコシダーゼに対するαGI活性を測定した。いずれのα-グルコシダーゼを用いた場合でも施肥後の葉中には、より強いαGI活性を観測することができた。それぞれの桑葉抽出液をLC-MSで定量分析したところ、1-DNJとD-AB1は投与前と投与後で増加していた。施肥前、施肥後についてはフラクション分取しαGI活性を測定した。いくつかのフラクションで施肥前と施肥後の活性に有意な差がみられた。有意差がみられたフラクションをLC-MSで定性分析したところ、1-DNJやD-AB1とは異なる質量電荷比(m/z)の物質が見つかった。以上の結果から、窒素肥料投与はαGI活性増加に寄与し、特にD-AB1量増加に強い影響を示すと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では漢方薬の原料として用いられる桑の機能性成分に注目し、豊富な桑の遺伝資源を用いたα-グルコシダーゼ阻害物質の多様性について調査した。当初の計画では信州大学繊維学部附属農場が保有する品種間で遺伝子発現解析をする予定であったが、品種の選定が予定よりも捗らず実施できていない点で研究に遅れが生じた。しかし、品種間ではなく、窒素肥料の投与により、α-グルコシダーゼ阻害物質の量に差が生じることが明らかになったため、比較条件の選定が明確になったため、遅れを取り戻しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
窒素肥料投与はαGI活性増加に寄与し、1-DNJおよびD-AB1量増加に強い影響を示すと考えられることから、投与前後の遺伝子発現量の比較をすることで、1-DNJおよびD-AB1の生合成に関する遺伝子の探索に取りかかる。遺伝子発現解析の方法として、次世代シーケンサーを用いた方法を実施する。品種間の比較と比べて、同じバックグラウンドの遺伝子背景を持つ個体の、環境に対する応答になるので、調査効率が格段に上がると考えられる。一方で、窒素投与してもαGI活性が増加しない品種をコントロールにすることで、窒素投与による他の環境応答遺伝子を排除することができると考えられることから、多くの品種におけるαGI活性の評価を引き続き行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
遺伝子発現解析を行う品種の選定が捗らなかったことにより、実施できなかった次世代DNAシーケンサーによる遺伝子発現解析をするための試薬代や委託分析料を次年度において計上する。25年度の使用分として計上した、消耗品費(α-グルコシダーゼ阻害物質を固相抽出するためのカラムや、バイアル瓶)は最終的な評価をするために必要である。また、調査・研究旅費や成果発表のための旅費を計上する。あわせて、研究補助者を雇用する費用や資料閲覧代、英語論文の校閲費として謝金を計上する。
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