2011 Fiscal Year Research-status Report
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23780005
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
西田 英隆 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (30379820)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | コムギ / 春播性遺伝子 / Vrn-D4 / クローニング |
Research Abstract |
【Vrn-D4の高密度マッピング】コムギの春播性遺伝子Vrn-D4が座乗する染色体領域を絞り込み、詳細な遺伝的地図を作成することを目的として、本年度はF2集団476個体を展開し、播性(Vrn-D4遺伝子型)とDNAマーカー(Xcfd67、Xcfd78、及びXbarc205)遺伝子型を解析した。先行研究においてXcfd67はVrn-D4と共分離していたが、本研究においてはXcfd67遺伝子型と播性が一致せず、組換えが生じたと考えられる個体が4個体観察された。そこで、遺伝的地図におけるXcfd67とVrn-D4の位置関係を明らかにするために、これらの4個体について、Vrn-D4を挟むように位置しているXcfd78及びXbarc205の遺伝子型を解析した。しかし、Xcfd67とVrn-D4の位置関係を特定できず、後代検定が必要であることが明らかになった。【Vrn-D4 候補遺伝子のシーケンス解析】VIL-1は、コムギの二倍種において春化要求性への関与が示唆され、また第5染色体の動原体近傍に座乗することが明らかにされている。VIL-1座乗領域はVrn-D4領域に含まれているため、VIL-1はVrn-D4候補遺伝子のひとつである。そこで今年度は、5D染色体のVIL-1(VIL-D1)を特異的にPCR増幅できるプライマーを設計することを目的として、普通系コムギのゲノム提供親である二倍種(A、B、Dゲノム)が保有するVIL-1のシーケンス解析を行い、各ゲノムに特異的な塩基配列変異を特定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
【Vrn-D4の高密度マッピング】F2集団476個体を展開してマッピングを進め、Vrn-D4とXcfd67の間で組換えが生じたとみられる個体を少数ながら得ることができた。これらの個体について解析を進めたが、F2世代ではVrn-D4とXcfd67の位置関係を明らかにできず、遺伝的地図について新たな情報は得られなかった。これは、Vrn-D4が動原体近傍に座乗しているために、組換えが生じにくく、組換え型個体があまり得られなかったこと、そのために位置関係の特定が容易な組換え型個体が得られなかったことが原因である。【Vrn-D4 候補遺伝子のシーケンス解析】普通系コムギへのゲノム提供親である二倍種において、VIL-1のシーケンス解析を行い、各ゲノムに特異的な塩基配列変異を特定できた。したがって、解析は順調に進んでおり、次年度以降にDゲノムのVIL-1(VIL-D1)に特異的なプライマーを用いてシーケンス解析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
【Vrn-D4の高密度マッピング】Vrn-D4が動原体近傍に座乗しているため、近傍マーカーと組換えを生じさせるためには、多くのF2個体を必要とする。このため、今後も新たにF2集団を展開し、組換え型個体の獲得を行うとともに、必要があれば後代検定も行い、Vrn-D4領域における遺伝的地図の高密度化を進めていく。また、遺伝的地図の作成に必要なDNAマーカーの開発も進めていく予定である。【Vrn-D4 候補遺伝子のシーケンス解析及び発現解析】上記のVrn-D4の高密度マッピングについては研究推進に遅れが出ていることから、並行して行っているVrn-D4候補遺伝子VIL-D1のシーケンス解析にも一層注力していく。本年度の解析結果に基づいてVIL-D1特異的プライマーを開発し、シーケンス解析を進める予定である。また、Vrn-D4遺伝子型が異なるコムギを用いてVIL-D1の発現解析を行う予定であるが、準同質遺伝子系統(育成中)を用いた次世代シーケンサーによる網羅的な遺伝子発現解析についても検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の通り、次年度もVrn-D4の高密度マッピング、候補遺伝子のシーケンス解析及び発現解析を並行して推進する予定である。高密度マッピングでは、新規DNAマーカー開発を行いつつ、大規模な分離集団(F2集団やその後代)のジェノタイピングを行う必要がある。また、VIL-D1のシーケンスについても、Vrn-D4保有・非保有の数品種を供試して、VIL-D1の上・下流域を含む数kbを解析する予定である。したがって、研究費の大部分はそれらの解析に必要な消耗品(試薬・器具)の購入に充てる。この他には、情報収集や国内学会での発表のための旅費、論文投稿のための費用を計画している。
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