2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23780005
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
西田 英隆 岡山大学, 環境生命科学研究科, 助教 (30379820)
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Keywords | コムギ / 春播性遺伝子 / Vrn-D4 |
Research Abstract |
【Vrn-D4の高密度マッピング】コムギの春播性遺伝子Vrn-D4の座乗領域を絞り込みつつ、詳細な遺伝的地図を作成することを目的として、昨年度までにF2集団476個体を展開し、春播性遺伝子Vrn-D4のマッピングを行ってきた。その結果、Vrn-D4はDNAマーカーXcfd78とXbarc205に挟まれた1.8cMの領域に座乗することを再確認できたが、依然Xcfd67と共分離しており、組換え型個体が得られなかった。そこで本年度は、F2集団約1500個体を展開し、播性(Vrn-D4遺伝子型)と新規DNAマーカー(22個)について遺伝子型を解析しているところである。 【Vrn-D4 候補遺伝子のシーケンス解析】VIL-1は、コムギの二倍種において春化要求性への関与が示唆され、Vrn-D4と同じく第5染色体の動原体近傍に座乗することが明らかにされていることから、Vrn-D4候補遺伝子のひとつである。今年度は、二倍種(A、B、Dゲノム)におけるVIL-1のシーケンス解析の結果に基づいてゲノム特異的なプライマーを開発し、普通系コムギのDゲノムに由来するVIL-1 (VIL-D1)についてシーケンス解析を行った。その結果、異なるVrn-D4対立遺伝子(春播性及び秋播性対立遺伝子)をもつ系統間で、VIL-D1の5’UTR、エキソン、イントロン、3’UTRの全領域において塩基配列変異は見られなかった。今後はより上流域及び下流域におけるシーケンス解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
【Vrn-D4の高密度マッピング】Vrn-D4は動原体のごく近傍に座乗しており、DNAマーカーとの組換えが生じ難い。Vrn-D4座乗領域を絞り込むためには、きわめて多数個体からなるF2集団を展開してVrn-D4ならびにDNAマーカーの遺伝子型を明らかにする必要があり、解析に時間を要する。 【Vrn-D4 候補遺伝子のシーケンス解析】異なるVrn-D4対立遺伝子を保有する系統においてVIL-D1の5’UTRから3’UTRの全領域に塩基配列多型が見られなかった。塩基配列多型を探索するためには、これまでよりも上流域及び下流域の解析が必要であるが、これらの領域は未知の塩基配列を有していることから解析の遂行には時間を要すると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
【Vrn-D4の高密度マッピング】すでにVrn-D4が分離している大規模なF2集団を展開しており、これらを用いてマッピング解析を進めていく予定である。Vrn-D4が動原体近傍に座乗するために組換え頻度が低いが、マッピングに利用できる多くのDNAマーカーを得られていることから、これまでよりも座乗領域を絞り込むことができると期待される。また、遺伝的地図の作成に必要なDNAマーカーの開発も随時進め、Vrn-D4領域における遺伝的地図の高密度化を進めていく予定である。 【Vrn-D4 候補遺伝子のシーケンス解析】異なるVrn-D4対立遺伝子(春播性及び秋播性対立遺伝子)をもつ系統間でのVIL-D1の配列比較を行うため、これまでよりも上流域・下流域のシーケンス解析を行う。これらの未知配列は5’及び3’RACE法、もしくはVIL-D1を含むゲノミッククローン(BAC)のスクリーニングにより獲得する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の通り、次年度もVrn-D4の高密度マッピング、候補遺伝子のシーケンス解析及び発現解析を並行して推進する予定である。高密度マッピングでは、新規DNAマーカー開発を行いつつ、大規模な分離集団(F2集団やその後代)のジェノタイピングを行う必要がある。また、VIL-D1のシーケンスについても、Vrn-D4保有・非保有の数品種を供試して、VIL-D1の上・下流域を含む数kbを解析する予定である。したがって、研究費の大部分はそれらの解析に必要な消耗品(試薬・器具)の購入に充てる。この他には、情報収集や国内学会での発表のための旅費、論文投稿のための費用を計画している。
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