2011 Fiscal Year Research-status Report
大豆フラボノイドの抗酸化活性と低温ストレス耐性の関係解明と関連候補遺伝子の解析
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23780009
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
戸田 恭子 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 作物研究所・畑作物研究領域, 主任研究員 (10360447)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ダイズ / フラボノイド / 低温ストレス耐性 / 形質転換 / 高速液体クロマトグラフィー(HPLC) |
Research Abstract |
これまでの研究から、フラボノイド生合成酵素遺伝子の一つであるフラボノイド3’水酸化酵素(F3’H)は大豆の低温ストレス耐性に関わることが強く示唆されるが、そのメカニズムは明らかではない。本研究では、大豆フラボノイドが関与する低温ストレス耐性機構および低温ストレス耐性に有用な遺伝子を明らかにするため、(1)大豆形質転換体を用いたF3’Hと低温ストレス耐性との関係解明、(2)ケルセチン含量や抗酸化活性に影響を及ぼす大豆遺伝子の解析、(3)ストレス条件下で代謝・修飾されるフラボノイド類の解析、を行う。今年度は大豆形質転換用ベクターを構築し、F3’H活性を持たない大豆白毛品種「カリユタカ」にアグロ法によりF3’H遺伝子を導入した。現在薬剤およびDS-Redによる赤色蛍光等により形質転換体を選抜している。また、低温ストレス耐性に関与するフラボノイド分子種を特定するため、F3’H活性を同様に有するにも関わらず低温ストレス耐性の異なる褐毛大豆品種間で、25度、15度(低温)条件における第2本葉のフラボノイド配糖体を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により解析した。その結果、高い低温ストレス耐性を示す「キタムスメ」「ハヤヒカリ」と低温ストレス耐性の低い「十勝長葉」「十育112号」とではフラボノイド配糖体の分離パターンが異なっており、低温ストレス耐性に特定のフラボノイド配糖体が関与する可能性が示唆された。一方、アレイ解析により「キタムスメ」と「十勝長葉」とで低温条件で発現する遺伝子を比較した結果、顕著に発現の異なるMYB転写因子や主要なフラボノイド生合成酵素遺伝子は見出されなかった。リアルタイムPCR法でも同様の結果が得られ、これらのことから、低温ストレス耐性にはフラボノイド生合成酵素遺伝子やそれらの発現を制御する転写因子の発現量は関与しない可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度の研究実施計画のうち、大豆形質転換に関しては予定通り進展した。また、24年度に行う予定であった遺伝子発現解析と第2本葉のフラボノイド配糖体解析を前倒しで実施した。しかし、23-24年度に行う予定であった未熟種皮フラボノイドの分析については、未だ検討事項が多く、当初の予定より時間と労力がかかることが予想される。これらのことを相殺し、全体としては予定通りと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
大豆の形質転換については、当初の予定通り選抜作業を継続し、形質転換体後代(T1、T2)を得る。23年度に得られた結果のうち、特にHPLCによるフラボノイド配糖体分析の結果に着目し、品種間差のあるフラボノイド配糖体を特定する。未熟種皮フラボノイドの分析については、これまで主に分離法を検討したが、今後は抽出法に関しても、抽出溶媒、夾雑物の除去法等再度条件検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題推進のため、次年度の研究費は交付申請時の計画どおり使用する。なお、次年度使用額7,557円は研究費を効率的に使用して発生した残額であり、次年度に請求する研究費と合わせて研究計画遂行のため使用する。
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Research Products
(1 results)