2011 Fiscal Year Research-status Report
イネ穂ばらみ期の高度耐冷性に関わる遺伝子座とその機能解明
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23780012
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
下野 裕之 岩手大学, 農学部, 准教授 (70451490)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | イネ / 耐冷性 / QTL解析 / 受精構成要素 |
Research Abstract |
穂ばらみ期の低温を原因とするイネの冷害研究の歴史は長く,我が国において100年以上の歴史を持つ。その中で,育種的,栽培的な改良により,耐冷性は格段に高まってきたものの,平成の大冷害にみられるように,イネの冷害は未だに大きな問題であり続けている.本研究では,イネの穂ばらみ期耐冷性のメカニズム解明のため,現在の栽培品種の耐冷性の最強レベルを3ランク上回る中間母本「東北PL3」の持つ穂ばらみ期の高度耐冷性の要因解析を通じた生理研究と分子生物学的研究の知見の統合を目的とする.本年度の試験の結果,まず,穂ばらみ期の低温下での受精に関わる新たな受精構成要素を葯長をベースとして開発した.続いて,QTL解析で用いる「東北PL3」と耐冷性の弱い「アキヒカリ」との組換え近交系統216系統(第8世代)について,72マーカーを用いた多型解析を行った.その遺伝子情報を用い,穂ばらみ期に冷害誘導処理を実施した上でQTL解析を行ったところ,冷害誘導による不稔発生については第5,12染色体に有意なQTLが検出された.第12染色体のQTLは,低温ストレス下で葯長を維持しやすい形質と,第5染色体のQTLは,同一の葯長あたりの受精効率を維持する形質と関わることが示された.以上,「東北PL3」の穂ばらみ期耐冷性に関与するQTL座のおよその位置の推定と,それぞれの遺伝子領域の機能の解析が実施できた.これまで,穂ばらみ期耐冷性のQTL座についていくつかの報告例があるが,その機能まで解明した例はほとんどなく,本研究成果のインパクトは大きい.今後,その機能ならびに遺伝子の特定は今後の耐冷性育種の大きな向上につながるものと考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初,23年度に,新たな受精構成要素を確立し,かつ組み換え近交系の遺伝子型の同定を目標とし,24年度に,その遺伝子の機能の解明としていたが,23年度の1年間の試験によりこれら2年間の当初計画をほぼ達成できた.
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Strategy for Future Research Activity |
検出された第5,12染色体上にあるQTLの詳細な位置の特定と,その生理的な機能の解明をさらに進める.23年度の結果では,QTLの正確な位置の特定につながっていない.そのため,「アキヒカリ」との戻し交雑集団を用いた解析(NIL作成)を開始する.加えて,第5,12染色体が「東北PL3」でバックグランドが「アキヒカリ」の系統を抽出し,詳細に花粉数ベースでの受精構成要素の特定ならびに機能解明を進める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度の試験の当初計画で,遺伝子型の同定を目的とした試験を予定して,そのため,PCRならびに電気泳動装置を予算申請していたが,研究協力を岩手農業研究センターにいただき,その部分は23年度には購入せずに達成することができた.しかし,24年度,さらに研究を推進のためのNIL作成には,多型解析が必須であり,そのために,やはりPCRならびに電気泳動装置の購入が必須となった.
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