2012 Fiscal Year Annual Research Report
イネ穂ばらみ期の高度耐冷性に関わる遺伝子座とその機能解明
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23780012
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
下野 裕之 岩手大学, 農学部, 准教授 (70451490)
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Keywords | 冷害 / 耐冷性 / イネ / QTL解析 |
Research Abstract |
北日本のコメ生産は冷害が制約し続けており,その被害軽減には耐冷性を強化した品種の効率的な選抜が不可欠である.昨年度の試験により高度耐冷性系統「東北PL3」が持つ耐冷性に関与する遺伝子領域が第5ならびに第12染色体上に座上することを明らかにした.そこで,本年度はそれら染色体領域を「東北PL3」に持ち,背景を「アキヒカリ」に持つ組み換え近交系(「第5染色体集団」を3系統,「第12染色体集団」を4系統、第5染色体と第12染色体の両QTLが「東北PL3」のである「第5・12染色体集団」を1系統)を選抜し,それら系統群の温度応答(3水準:対照,18℃,19℃)を恒温深水法を用いて検討した. 葯長は「東北PL3」が全ての水温条件下で最も長く,「アキヒカリ」は最も短かった.また水温の低下に伴う葯の短縮程度は「アキヒカリ」が最も大きく,水温が低下するほど「東北PL3」との差は大きくなった.一方,「第5染色体集団」は対照区において「アキヒカリ」と差は小さかったが,19℃条件下で約20%,18℃条件下で約60%長く,低温処理下で長い葯を維持した.「第12染色体集団」は対照区と19℃条件下において「アキヒカリ」と大きな差はないものの、低温下における水温の低下に伴う葯の短縮程度は約5%と最も小さく,葯長の差は大きくなった.「第5・12染色体集団」は対照区で「アキヒカリ」よりも約15%長く,低温処理下では「第5染色体集団」同様,長い葯を維持した.不稔歩合は,いずれの系統も低温処理下において,葯長と密接な関係がみられ,水温および系統間の葯長の違いが不稔歩合に反映された. 以上,水稲「東北PL3」の高度耐冷性における2つ領域のQTLのうち,第5染色体のQTLは葯の伸長を介して耐冷性を向上させ,第12染色体のQTLは低温下における葯の短縮を軽減して耐冷性を強化することを明らかとした.
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Research Products
(1 results)