2012 Fiscal Year Research-status Report
老化特異的プロモーターによりIPT遺伝子の発現を誘導した組換え花きの作成と解析
Project/Area Number |
23780025
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
中野 龍平 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (70294444)
|
Keywords | 老化特異的プロモーター / サイトカイニン / 花持ち |
Research Abstract |
I) PSARK-IPT組換え花き類の作成とその解析 PSARK-IPTを導入したキク‘精興の誠’に関して、組換え体を栽培・収穫し、花持ちの調査を引き続き行った。その結果、エチレン存在下において葉の黄化が著しく抑制された。また、暗黒化に保存すると,1週間程度でWTの葉は黄化するが,PSARK-IPTを導入した‘精興の誠’ではこのような黄化は起こらず,実際の輸送においても有用な形質を示していることが明らかとなった.現在、これらの形質と葉のサイトカイニン含量との関係を調査する準備を進めている。 ストレスに弱いことが問題となっているキク‘カナリア’にPSARK-IPT遺伝子の導入を試み、いくつかのカルスが得られたが,そのカルスよりシュートが得られなかった.現在,ホルモン組成など培地組成を修正しながら,シュートの誘導を試みている.カーネーションに関しても、ホルモン組成の再検討を行ったがカルスからシュートが得られておらず,さらなる検討が必要となっている. II) 花弁老化特異的プロモーターを用いたIPT誘導組換え花き類の作成とその解析 オートファージに関わるアラビドプシスATG8遺伝子のプロモーター領域1.8kbの単離したのち, Fusion PCRにより、IPT遺伝子と繋げたキメラ遺伝子(PATG8-IPT)を作成し、遺伝子組換え用のバイナリーベクターに挿入した。このコンストラクトを用い、ペチュニアへの遺伝子導入を試み、現在、1系統の組換え体の作成に成功した。現在,花が咲き受粉をしているところである.また,アラビドプシスへの遺伝子組換えを試みたところ,多数の組換え体が得られている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
I) PSARK-IPT組換え花き類の作成とその解析においては、計画どおり、キク2品種の葉の黄化に関して、切り花レベルでの比較を行うことができた。また、‘精興の誠’では暗黒化における葉の老化が実用上において問題となっているが,PSARK-IPTを導入した‘精興の誠’ではこの黄化が抑えられており,実際の流通現場においても有用な形質を持っていることが明らかとなった.一方、キク‘カナリア’およびカーネーションに‘ノラ’への遺伝子導入に関しては,遺伝子の導入に成功しカルス段階までは生育しているが,そこからシュートの誘導に成功しておらず,計画の進行が遅れている.但し,培地のホルモン組成の調整により,この課題はクリアーできるものと期待される. II) 花弁老化特異的プロモーターを用いたIPT誘導組換え花き類の作成とその解析においては、予定どおり、アラビドプシスATG8のプロモーター領域をプロモーターとして用いたPATG8-IPTキメラ遺伝子の導入に成功したペチュニアが得られており,今後のその花弁老化への解析を進める体制が整っている.また,PATG8-IPTキメラ遺伝子により個体の再分化が影響される懸念があったので,再分化を経ない手法により遺伝子の導入が可能であるアラビドプシスへの組換えを試み,多数の組換え体が得られている.これは予想以上の成果であり,今後,その解析の結果も期待できる.
|
Strategy for Future Research Activity |
研究では、遺伝子組換え技術により、老化が抑制され、ストレスに強い花き類を作成し、花持ち期間が長く、低コスト・省エネルギーの流通を可能とする切り花の提供を目的とする。昨年度までの成果を踏まえて以下のように研究を推進する予定である。 I) PSARK-IPT組換え花き類の作成とその解析:サイトカイニン合成系の律速段階を担う酵素であるIPTをコードする遺伝子を老化開始時に一過的に遺伝子発現を誘導するPSARKプロモーターの制御の基に発現させるコンストラクを用いて、ペチュニア‘ミッチェル’およびキク‘神馬’、‘精興の誠’の個体が得られており。また、再分化途中の組換え体として キク‘カナリア’およびカーネーション‘ノラ’が得られている。これらの個体を引続き育成・収穫し、様々な条件下にて貯蔵、花持ち試験を実施し、そのストレス耐性、老化様相を調査する。さらに、遺伝子導入のサイトカイニン含量への影響を調査する。特にキク ‘精興の誠’では暗黒化における老化の抑制という、流通上有用な形質が得られており、より詳しく調査を進める。また、キク‘カナリア’およびカーネーション‘ノラ’に関しては、ホルモン組成の再分化への影響を調査し、再分化を実現させる。 II) 花弁老化特異的プロモーターを用いたIPT誘導組換え花き類の作成とその解析 花弁老化特異的プロモーター として働くと予想されるATG8プロモーターとIPTを繋げたキメラ遺伝子を導入したペチュニアおよびアラビドプシスが得られている。これら遺伝子組換え体の花弁の老化やサイトカイニン濃度をを調査し、PATG8-IPTの導入により、老化抑制が見られるか明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定どおり、遺伝子組換え体の作成におよびその調査に成功しているが、培養個体の生長が遅く、鉢上げおよびその後の解析、特にサイトカイニンの分析に必要な費用として予定していた支出の内約27万円を次年度以降に繰り越しした。但し、組換え体の作成自体は順調に進んでいるので、本年度の計画の遂行には、繰り越し分を含めた本年度使用予定の研究費が必要である。 研究費(繰越額272,516円+次年度申請額800.000円=1,072,516円)の使用の予定の内訳は以下のように計画している。組換え体の作成および無菌培養(250,000)、組換え体の隔離温室での育成(200,000)、遺伝子解析(250,000)、サイトカイニン量の解析(200,000)、その他消耗品類(80,000)、旅費(100,000)、人件費(100,000)。実験計画に記載のように、サイトカイニン含量の解析を進める必要があり、20万円を計上している。その他の経費に関しては、一般的な遺伝子組換え体の作成およびその解析に必要な経費となっている。特に、大きな物品の購入の必要はなく、すでにある設備を有効利用する。
|