2013 Fiscal Year Research-status Report
日本独自の都市景観が作る生物多様性維持機構:鳥類生息環境としての神社と寺の異質性
Project/Area Number |
23780028
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
三上 修 岩手医科大学, 公私立大学の部局等, 講師 (10404055)
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Keywords | 鳥類 / 都市 / 社寺林 / 多様性 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本独自の都市景観を構成している、神社と寺が、都市の鳥類多様性にどのように貢献しているかを明らかにすることである。というのも、世界的に都市が拡大しており、都市の内部でも生物多様性を守る必要性が叫ばれるようになってきており、そのなかで日本においては、寺社が都市の生物多様性を守る役割をしているからである。鳥類を対象とするのは、都市の中では食物網の高次に位置し、観察のしやすさの点でも指標生物として適しているからである。 2013年度におこなったことは4つにまとめられる。ひとつは野外調査である。西日本のいくつかの都市において、寺社の景観の違いを見つけるために、環境調査を行った。ふたつめは、これまで採った記録をまとめ、国内学会で口頭発表を行ったである。発表内容の概要は、寺は、比較的均質な鳥類相を持っているのに対し、神社は、神社ごとに種の構成が違うという点である。三つ目は、神社などを利用する鳥類相に、変化がないのかを確認するために、神社を含む大規模な緑地で行われている探鳥会の記録を解析し、論文として発表したことである。ただし、必ずしも、寺社で探鳥会が行われているわけでではないので、寺社だけではなく、城跡などの記録も用いた。この結果をまとめると、全体的な種数としては、明らかな増加傾向、減少傾向などは見られなかったが、細かく見ると減少している種数が相対的には多く、種数の減少として検出されるほどではないが、減少傾向が見て取れた。4つめは、そもそも都市鳥についてまとめておく必要を考え、総説を書いたことである。こちらは、査読後、現在は、改訂中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野外調査については、進行が遅れている。理由としては、研究代表者の授業数が増えて、野外調査に行く時間が十分に採れなかったことであり、ただし、それを見越してアルバイト代を申請していたいが、研究代表者がアルバイトとともに調査をするような形でなければ認められないとこのことなので、それでは意味がなく、その分、調査が遅れている。一方で、既存データの解析が当初の予定以上に進んでいるので、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度は最終年度なので、3つのことを行う。ひとつは、現状の結果の国際学会での発表である。2014年の8月に、国際鳥類学会が東京で開催されるので、そこで発表を行う。二つ目は、継続して野外調査を行う。西日本のデータが十分に採れていないので、それを採ることと、既存データを見直した時に、これまで調査した東北地方の環境データで追加で調査をすべきものがあるので、その調査を行う。三つ目は、論文の作成である。改訂中のものも含め、論文作成・投稿をしていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初は、調査者をアルバイトで雇用して調査をお願いするつもりであったが、研究代表者が付き添っているようなアルバイトでなければならないとのことで、それが利用できなかったためである。また、妻である三上かつら(鳥類研究で博士の学位あり)を研究協力者として、調査費用を出して調査をしてもらうことも考えたが、身内に科研費を使うと不正と取られないとのことで、これもできなかったためである。 自身の野外調査を増やすこと、または録音機器、調査機器、解析機器などで、アルバイトを雇用できない分を補うことを考えている。
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