2012 Fiscal Year Research-status Report
ポジトロンイメージング技術を用いた果菜類の光合成産物動態の日変化の解析
Project/Area Number |
23780030
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Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
菊地 郁 宮城大学, 食産業学部, 准教授 (30360530)
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Keywords | 果実発達 / 光合成産物 / 転流 / ポジトロン |
Research Abstract |
ナスを昼(13h)/夜(11h)温度を28/18℃に設定した人工気象室内で12cmポットを用いて育成した。第1花を開花日に受粉し、開花後2週間程度の個体を試験に供試した。明期開始(ライト点灯)から5,30,180,360,420,600,780分後に20MBqの11CO2を第1果実の直下葉にパルスで処理した。試験は①5,180,360分後処理 ②30,180,360分後処理、③420,600,780分後処理の3つ分けて行い、各試験は同一個体を用いて行った。 試験①において、明期開始5分後に11CO2を処理した場合は固定量が他の区に比べて少ないのが観察された。このような傾向は試験②の明期開始30分後の処理でも見られた。 試験①、②とも、11CO2の固定量が低下した5分、30分後の処理では葉からの移行速度が若干低下した。しかし、移行量には処理間で大きな差が見られなかった。試験③において、固定量は420分後処理で一番高く、600分および780分後処理では低下する様子が見られた。試験③で、処理直後に暗黒下となる780分後処理では移行速度や量が大幅に低下するのが示された。 前年度の結果では、連続照明下に長く維持した後のほうが光合成産物の転流量・速度ともに高まるとの結果であったが、13時間といった標準的な日長を細かく区切って観察した場合は、明期開始直後(5~30分)以外は転流速度や量に大きな違いは見られないことが明らかとなった。これは、前年度の試験が連続暗黒下36時間(48時間)、連続照明下48時間(36時間)という極端な条件であったためと考えられるが、日照などの条件によっては、葉における炭水化物の蓄積状態が大きく変動し、転流量・速度に影響を与える可能性も示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本試験でトレーサーに使用しているポジトロン放出各種(11C)の製造には加速器が必須であるため(独)日本原子力研究開発機構と共同研究を結び、高崎量子応用研究所(高崎研)の加速器によりトレーサーの製造と実験を行っている。しかし平成23年3月11日に発生した東日本大震災の影響により大規模な節電対策がとられたため、高崎研の加速器も長期間停止し、その影響で初年度の試験計画に大幅な遅れが生じた。このため、今年度は前年度に行えなかった試験を優先したため、当初予定していた計画通りに試験が進捗しなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の理由により予定通りに試験が進捗しなかったため、研究期間を1年間延長することとした。次年度は前年度同様13時間日長区を設定し30,180,360,420,600,780分後に測定を行うが、測定ごとに温度を変える事により、短時間の温度変化が光合成産物の動態に及ぼす影響について評価を行う。この際、温度条件は既知の栽培試験を参考に設定する。 また、上記試験結果について国際学会において成果の発表を行うとともに、論文投稿に着手する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題の推進のため、PETIS測定に必要な試薬類およびガラス器具類等の消耗品費として100万円前後の使用を予定している。また、原子力研究機構高崎研究所での研究・打ち合わせの他、最終年度であることから、国内・国外における学会において成果の発表を行うための旅費に80万円程度を予定している。
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