2012 Fiscal Year Research-status Report
ブドウ果実におけるフラボノイド代謝に関与する遺伝子の機能解析
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23780036
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Research Institution | National Research Institute of Brewing |
Principal Investigator |
小山 和哉 独立行政法人酒類総合研究所, 醸造技術基盤研究部門, 主任研究員 (30416424)
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Keywords | 園芸学 / 果樹 / ゲノム / 二次代謝 / ストレス応答 |
Research Abstract |
植物の二次代謝産物であるフラボノイド化合物は抗酸化性、抗ウィルス性、抗癌性など多くの機能性をもつことから、注目される化合物である。また、色や呈味性をもち、ブドウ果実を利用した加工飲料(ワインなど)における官能特性を決定づける重要な因子でもある。平成24年度は、昨年度に行ったSuperSAGE法の結果をもとに、発達時期、各種環境下(果房周囲の光環境など)における果実中のフラボノイド(プロアントシアニジン(PA))組成変化に同調した発現変動を示す遺伝子について抽出を行った。抽出された遺伝子群には、既知のPA生合成系の構造遺伝子(VvANR,VvLAR1)に加え、グルコシルトランスフェラーゼ、セリンカルボキシペプチダーゼなど前駆体の修飾に関与すると考えられる遺伝子、トランスポーター、MYB型転写制御因子などが含まれていた。 次に、得られたMYB型転写制御因子について全長配列を決定し、推定アミノ酸配列を他の植物で報告のあるMYB型転写因子の配列と系統樹解析を行ったところ、シロイヌナズナTT2などプロアントシアニジン生成の制御因子群とクラスターを形成することがわかった。また、ブドウの様々な組織を用いた定量PCR解析によって、このMYB型制御因子の発現は、これまでに同定されているプロアントシアニジン生成の制御因子とは部位特異性、環境応答性が異なることが示唆された。更に、機能の解析をすすめるため、カリフラワーモザイクウィルス35Sプロモーターでこの遺伝子を強制発現させたシロイヌナズナを作成し、解析を行った。マイクロアレイ解析の結果、この遺伝子はプロアントシアニジンの生成経路の遺伝子群を特異的に制御していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に実施したSuperSAGE法によって得られた遺伝子発現プロファイルデータの解析を行い、フラボノイド(特にプロアントシアニジン)の生成に関与すると考えられる遺伝子群について抽出を行った。このうち、プロアントシアニジンの制御に関連すると考えられる遺伝子について、モデル植物を用いた、形質転換体を作成し、その表現型について解析を行った結果、当遺伝子がプロアントシアニジン生合成系の新たな制御因子であることが示唆された。これらについては当初の計画以上に進展していると考えられた。実際のブドウにおけるこの遺伝子の機能解析については、当遺伝子を形質転換したブドウ毛状根を用いて解析を行ったが、この解析系の問題点が明らかとなり、今後解析系の検討も含めた検討が必要であると考えられた。 以上のことより全体としては、計画通り、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
抽出された遺伝子群におけるフラボノイド生成の制御に関与すると考えられるその他の候補遺伝子について、ブドウやシロイヌナズナを用いた形質転換体の作成・解析を行い、その遺伝子の機能について検討を行う。抽出された遺伝子のブドウにおける機能解析にあたっては、エンブリョウジェニックカルスを用いたブドウの形質転換系を利用する。また、転写制御因子の機能解析にあたっては、ブドウ培養細胞を用いた一過性の遺伝子発現系も利用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の直接経費の物品費としては、遺伝子発現の定量PCRによる確認、形質転換体作成・解析にかかる費用を計上している。価格の高いものとしては、形質転換体の解析にあたって使用予定であるマイクロアレイ等の費用である。その他の主なものとしては、プライマー作成費、各種酵素類などの試薬類の費用が予想される。 また、平成24年4月に国際学会(9th International Symposium of Grapevine Physiology and Biotechnology)で学会発表を行うため、その費用を旅費として、また論文作成にかかる費用を、その他経費として使用する計画としたい。
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