2011 Fiscal Year Research-status Report
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23780037
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Research Institution | Fukuoka Agricultural Research Center |
Principal Investigator |
池上 秀利 福岡県農業総合試験場, その他部局等, 主任技師 (40502414)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | イチジク / 花成 / 連続着果 / FTホモログ / 持続的発現 / 制御関係 / 光経路 / 冗長性 |
Research Abstract |
次世代シークエンス解析により23年度新たに休眠枝由来の約13万6千リードのESTを取得し、既得のリードと併せて計約58万リードのイチジク部位別ESTデータベースを構築した。この中から他植物の知見から花成に関与することが推定される遺伝子のホモログ計22種の配列を特定し、検出のための特異的プライマーセットを作製して、葉部における年間発現変動をリアルタイムRT-PCRにより調査した。4種のFTホモログについてはうち3種において一定量以上の発現と変動傾向が認められ、FcFT1が季節性を有さない持続的発現を、FcFT2が新梢伸長期の5月に発現のピークを、FcFT3が5月と9-10月に発現ピークを示した。FTホモログ以外の遺伝子群についてはFcCO1を含む複数の遺伝子でFcFT1に似た持続的発現性を示し、FcDAM2は休眠解除とともに発現低下していた。FcFT1のゲノム構造解析ではプロモーター領域及びイントロン領域を含む遺伝子全域に光反応性が推定されるシスエレメント配列を多数確認した。さらにFcFT1発現の日長反応を見たところ24時間暗期では低レベルで推移したのに対し、相対的長日区と相対的短日区では共に明瞭な上昇が認められた。 以上の結果からイチジクの連続着果性の制御においては光経路を介したFcFT1の持続的発現や複数FT遺伝子の冗長的な作用が重要である可能性が示唆された。今後4種のFcFTについてさらに機能・制御解析を進めることで、イチジクの連続着果性を規定する遺伝要因の一部が明らかとなることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に計画していた次世代シークエンス解析によるEST情報の拡充や主要花成関連遺伝子群の同定を達成し、遺伝子発現解析によりFTホモログを含めた主要な花成関連遺伝子群の発現動態を把握することができた。花成関連遺伝子の発現解析及びゲノム構造解析によりFcFT1の主な制御経路が光経路であることを推定するとともに、FcFT1の持続的発現性の制御要因の一部であると予想される複数のトランスエレメント候補(DOF、GT-1転写因子等)を選定することができた。また複数のFTホモログの冗長的な働きがイチジクの連続着果性に関与している可能性を見出すとともに、次年度以降の詳細な解析に向けてイチジクゲノムライブラリーを新たに構築してFTホモログのゲノミッククローンを複数特定した。特徴的性質を有するFcFT1遺伝子の解析結果については平成24年に学会発表予定であり、現在論文投稿中である。以上のことからおおむね当初の計画通りに課題は進行していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度の研究結果からFcFT1の主な制御経路が光経路であると考えられたことから、24年度以降は光経路上の遺伝子群について重点的に解析を行う。イチジク連続着果性の第1の要因であることが予想されるFcFT1持続的発現性については、CONSTANSホモログや主要なトランス制御因子候補である転写因子群について追加の遺伝子発現解析を行い、鍵となるFcFT1制御因子のさらなる絞り込みを行う。光刺激・制御因子とFcFT1との具体的な制御関係をプロモーター解析及びゲルシフトアッセイ等の手法により検証し、持続的発現性が実現されるメカニズムの詳細を明らかにする。またFcFT1とは別に複数のFTホモログの存在が新たに同定され、これらの遺伝子がイチジク連続着果性に対して寄与している可能性も示唆されたため、同遺伝子群について機能解析実験を行い、花成に対するFTホモログの冗長的作用性が成立するかを併せて検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
直接経費については、研究費の約45%をFcFT1制御機構解明のためのプロモーター解析とゲルシフトアッセイに使用する。研究費の約15%は、FcFT1以外の3種FTホモログのゲノムシークエンス全長決定のためのイチジクゲノムライブラリーのスクリーニングやシークエンス解析に使用する。研究費の約20%は、配列が決定したFTホモログの機能確認のため形質転換用ベクターの構築とシロイヌナズナ形質転換実験に使用する。研究費の約10%は遺伝子発現解析全般に使用する。残りの研究費については、学会発表のための旅費や作成論文の校正費用などに充てる予定である。
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